「真央ちゃんや佳菜子ちゃんを『頑張ってね』と見送るだけでは......」鈴木明子、28歳での五輪出場の舞台裏 (2ページ目)
【溜めていた力を爆発させた全日本】
しかし、ソチ五輪のプレシーズンとなる2012−2013シーズンは、全日本選手権で4位にとどまり、鈴木はこう口にしていた。
「今シーズンは最初から練習がうまくいっていませんが、試合ではたまたまよかったりしても波がすごく大きいです。『ここまでは最低限』というのがつかめなくて、うまくいかないなと感じていたので、練習でもミスが多かった。ここ数年では感じたことがない迷いの状態なので、不安になっています」
GPシリーズ2戦連続2位で進出したGPファイナルも、180.77点の3位になりながらも「順位はラッキーだとしか考えていない。今回の出来は『悔しい』のひと言」という言葉を残した。
年が明けると、四大陸選手権は自己ベストの190.08点で2位となり一度笑顔を取り戻したが、世界選手権はフリーで氷の柔らかさに対応できずにミスを連発。過去最低の12位という結果に終わる。続く世界国別対抗戦は再び自己ベストを更新する199.58点で1位という結果。調子の波の大きいシーズンだった。
それでも、迎えた2度目の五輪シーズンは順調だった。GPシリーズ初戦のスケートカナダは193.75点で2位。次のNHK杯は3位。
ジュニアから移行してきたばかりのロシア勢の活躍があり、僅差でGPファイナル進出は逃したが、五輪代表を狙う最後の全日本選手権では、溜めていた力を爆発させた。
「NHK杯のあとにスケート靴を替えるところからスタートしましたが、(全日本の前に)調子がガクンと落ちてしまいました。でも先生から『まだ1週間あるから、信じなさい』と言われて。緊張のなかでも成長した姿を見せられたので、諦めないでよかったです」
そのSPは流れを途絶えさせずに滑りきって70.19点を獲得し、浅田に次ぐ2位発進。そしてフリーは、五輪代表がかかるプレッシャーのなか、「守るところと攻めるところのバランスが難しかった」と本人が振り返る『オペラ座の怪人』で挑んだ。
最初のコンビネーションジャンプ2本と3回転ルッツを丁寧に決めると、伸びのある滑りで最後までスピードに乗ったままノーミスで終え、小躍りして喜ぶ納得の演技だった。
演技構成点では5項目中4項目を9点台に乗せ、得点は非公認ながら自己ベストを大きく上回る144.99点で、合計215.18点。あとに滑る村上佳菜子や浅田にプレッシャーをかけ、結果的には2位に大差をつけての初優勝。ソチ五輪代表を決めた。
「前年のGPファイナルでソチへ行った時に『ここに戻って来たい』と思いました。真央ちゃんや佳菜子ちゃんをはじめ、男子もみんな五輪を目指して頑張っている。そんな選手たちを自分は『みんな頑張ってね』と見送るだけでいいのかなと思った時、私もそのなかのひとりになりたいと思いました」
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