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宇野昌磨が本田真凜とのアイスダンスで見せた進化 高橋大輔と重なる気配とその先 (3ページ目)

  • 小宮良之●取材・文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

【気心知れたパートナーの存在】

 本田という気心の知れたパートナーがいたことも、大きなアドバンテージになっていた。本田が即興センスバツグンで、半年近く、転向も考えてアイスダンスをやっていたこともあっただろう。ふたりがリスペクトで結びついていたのもあった。

「すごい選手たちと過去にたくさん試合を経験し、今は追われる立場になったうえで自信を持てる精神状態にまで持っていけるのも彼のすごさだと思いますが......」

 昨年3月のインタビューで本田は宇野について興味深い話をしていた。

「普通の選手は、練習でできていないと焦りが出て、試合だけでも跳びたいという気持ちになって、だからこそ緊張や不安も出てくるんです。でも、練習でできていなかったら悔しくないっていうのが宇野選手の考え方。長年アスリートとしていろんな場所で戦ってきたからこそ、突き詰めて体得した考え方なのかなと」

 本田は、スケートにとことん打ち込める宇野に敬意を表していた。

 結果、宇野がリードし、本田が応える構図が自然にできたのかもしれない。それはアイスダンスにとっては理想的な関係性と言える。宇野が本田の可憐さを引き出し、輝かせていた。

 誰かと強く結びつくことで、フィギュアスケートの世界はどこまでも広がるーー。宇野自身、ショー全体で「誰かと滑る」というおもしろさを感じていた。彼はもはやシングルスケーターの枠に収まらない。"その先にある表現"に足を踏み入れたのだ。

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著者プロフィール

  • 小宮良之

    小宮良之 (こみやよしゆき)

    スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。

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