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【国別フィギュア】鍵山優真は大技導入も転倒「落ち込みすぎてやばかったんですが......」 日本チームの「みんなが明るくしてくれた」 (2ページ目)

  • 小宮良之●取材・文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

【大技は転倒も意味あるチャレンジ】

 静寂の会場に『The Sound of Silence』が立ち上るように流れ出し、演技が始まった。

 冒頭、鍵山は4回転トーループ+3回転トーループを完璧に決め、GOE(出来ばえ点)も含めて17.36点とハイスコアを叩き出している。結局、4回転フリップはうまく軸が取れず、派手に転倒した。しかし、トリプルアクセルはまるで氷に吸い込まれるように静謐に降り、GOE含めて11.43点を出し、アクセル単体ではマリニンを上回った。

 終盤、曲にボーカルが入って盛り上がりを見せるなか、鍵山はハイレベルなスケーティングで観客のボルテージを高めた。スピン、ステップはすべて最高評価のレベル4だった。一つひとつの動きに無駄がなく、エレメンツごとに余韻を感じさせた。ジャンプが1本失敗だったことを考えれば、93.73点での4位は、ポテンシャルの高さを示したとも言えるだろう。

「どう捉えられるかわからないですが、フリップ以外で頑張ろうとは思っていました。ミスしているフリップに意識が持っていかれて、ほかがおろそかになるよりは......」

 鍵山は冷静に振り返った。

「トゥーループ、アクセルはこれまででも一番の出来でした。ステップも最後の表現まで、感情を込められたと思います。だからこそ、スタンディングオーベーションをしてもらったはずですし、そこは自信を持ってもいいところなのかな、と」

 彼は進化を遂げる過程での失敗を恐れなかった。フィギュアスケートという競技は日進月歩で、立ち止まることができない。チャレンジは宿命なのだ。

「五輪シーズンだからまとめるじゃなくて、どんなシーズンでも新しい挑戦をしないといけない。今シーズン、これ以上ないくらいのショートをしながらも、自己ベスト更新に至りませんでした。だからこそ、フリップ挑戦は意味があると思っています。ただ、曲のなかに入れるのには、もう少し自信も必要で。ショートは3本のジャンプで、絶対に決めないといけないから」

 変身を遂げる痛みが、己を鍛えることも知っているのだろう。実際、もがくなかで全体的にクオリティが上がりつつある。フリーでも新たに4回転ルッツを入れる構成を考えているという。一日の練習のなかで、何本かは降りることができているそうだ。

「ただ、4回転ジャンプを入れれば入れるだけいいわけではなくて。一本一本の質も大事になります。スピン、ステップも大切なエレメンツで、(基礎点が低くても)GOEで稼ぐのも大事だと思っています」

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