鍵山優真、圧巻の演技で全日本初V 次は世界の頂点へ「理想の最終的な構成はルッツも含めた4回転5本構成」 (3ページ目)
【大技を入れた4回転5本構成に挑む】
期待されながら崩れてしまう選手が多くいたなか、鍵山の優勝は順当ともいえる結果。だが鍵山にとっては、意味がある勝利だった。
「いつも冷静で感情を思いっきり外に出すことはないので、父が感動して涙を流してくれていたのはすごくうれしかった」(鍵山)という、父の正和氏のキス&クライでの涙。正和氏は「この大会にかける思いは多分、優真以上に私のほうが強かった」と話す。
「親子で優勝(※正和氏は現役時代に全日本3連覇)というのではなく、優真がこれでやっと世界を狙っていけると言えるのかなと思います。やっぱり全日本タイトルを持ってこそ世界のてっぺんを見据えていけるというのはずっと思っていたので、やっとリスタートという感じです。これを持っているか持っていないかで、世界のトップを狙う、狙わないという言葉の重みも違ってくる」
全日本王者のプライドがあってこそ、いざという時の勝負への執着心も変わってくる。タイトルを保持する意味の重さを、正和氏は強調するのだ。
鍵山はこう話す。
「これからは全日本王者と紹介される場面も多くなってくると思うし、そういうところをしっかりと背負っていかないといけないと思っています。恥じぬような演技や行動をしっかりとしていきたいです」
今後のプランについては、こう語った。
「(全日本のフリーは)3回転フリップ+3回転ループのところを3回転フリップ+ダブルアクセルにレベルを落としていたので、年明けの試合ではフリップ+ループにあらためてチャレンジしたい。そういうところから攻めていかないと、今のままでは本当に強いライバル選手がいる世界選手権で表彰台に上がれるかどうかも危ないラインだと思うので、日々120%出しきれたと思うような練習を積み重ねて頑張っていきたい。
4回転ルッツももちろん、練習や曲かけに入れてやっていきたいです。僕のなかでの理想の最終的な構成はルッツも含めた4回転5本構成なので、しっかりと体力もつけて体も鍛えて、いい演技ができるように日々努力していきたいと思います」
初優勝は、ともに歩み続ける鍵山親子にとって、次へ向け気持ちを高める大きな収穫だった。
著者プロフィール
折山淑美 (おりやま・としみ)
スポーツジャーナリスト。1953年、長野県生まれ。1992年のバルセロナ大会から五輪取材を始め、夏季・冬季ともに多数の大会をリポートしている。フィギュアスケート取材は1994年リレハンメル五輪からスタートし、2010年代はシニアデビュー後の羽生結弦の歩みを丹念に追う。
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