坂本花織「ぶっ飛ばしていこう」 攻めの気持ちでNHK杯を優勝してさらに進化 (2ページ目)
【攻めの気持ちで挑んだ「キツい」プログラム】
8日のショートプログラム(SP)は「60%ぐらいの自信」と言うなか、最初から伸びのある滑りでジャンプをしっかり決めるとスピードに乗ってステップシークエンスを滑り、最後のレイバックスピンまで勢いは衰えなかった。
結果は今季自己最高の78.93点。前週のフランス杯でグレンが出した今季世界最高得点を0.79点上回った。
「一つひとつをすごく丁寧にできたと思ったので不安はなく、『どう評価されるんだろう』と楽しみでキス・アンド・クライに座っていましたが、予想を上回る得点ですごくびっくりしました」
坂本はそう言って笑顔を見せた。
「自分のなかではいいルッツが跳べたと思うし、中盤のスピンは曲のテンポが速いと回転数が足りなかったりしますが、落ち着いてできたのでクオリティの高い演技ができました」
翌9日のフリーも、直前の男子シングルで同門の壺井達也がSPに続きほぼノーミスの演技で初表彰台の3位。前日のSPでは壺井の演技に、メイク中に涙を流したという坂本だったがこの日は「ヘアアイロンを振って喜んだ」と笑った。
「すごくいい緊張感でした。準備中に男子の気迫のある演技を見て『自分も頑張らなきゃ』という気持ちになり、演技自体もショートよりも落ち着いて完成度の高いものができたかなと思うので満足です」
今季フリーは『オール・ザット・ジャズ』。坂本の演技は、最初から最後まで自信に満ち溢れていた。坂本のフリーは、ブノワ・リショー氏が振り付けを行なうようになってから毎回、「体力的にキツくて最後まで持つか大変」と話していたが、今回のプログラムについても坂本は「開始10秒を過ぎてからは4分間走りっぱなしみたいなプログラムで、これまでのなかでも一番厳しいし、滑ってみないとどうなるかわからない」と話す。
「トリプルアクセル+オイラー+3回転サルコウから3回転フリップ+3回転トーループにかけてのところを乗り越えれば、あとはもう気持ち的にはたぶんいけるかなと思う。その間が一番息を整えやすいパートで、しっかり整えられるかどうかが後半の出来にもかかってくる。そこが一番の山場かなと思います」
この日はそんなプログラムに、攻める気持ちで挑んだ。
「今まではなるべく息があがるのを遅くさせようというか、『前半を抑えていって』ということを考えてしまっていた。でも、そうすると守りに入ってしまうことになるので、今回は前半からぶっ飛ばしていこうと。気負わずに攻めの気持ちでいけたのが、良かった点」
終盤のコレオシークエンスで踊りまくった直後の3回転フリップは回転不足で減点されたが、最後までスピード感や躍動感はまったく衰えない、走りきった演技。最後のポーズでよろけてしまうハプニングもあったが、坂本自身は大笑いしていた。
「スピンの最後に前後開脚みたいに足を開いてそこから引き寄せるんですが、いつもならエッジに戻るところでかかとが引っかかってしまいました。最後まで絶対気を抜かないでおこうと思ってすごく集中していて、最後に『よっしゃ!』という気持ちになったらひっかかって。『ちょっと待って。最後にこけるの?』っていう感じで......。でも、なんとかリダクションがつかず耐えられたよかったです」
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