NHK杯は鍵山優真が首位発進 フィギュアスケート日本男子は切磋琢磨して「どんどん上を目指す」 (2ページ目)

  • 小宮良之●取材・文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

【自分はできる、と信じて】

 黒い衣装を着た鍵山は、『The Sound of Silence』のギターに合わせ、氷上を舞い始める。冒頭、4回転サルコウを華麗に降りている。肩甲骨の可動域を全開するように大きく腕を振り、スケーティング自体にダイナミズムが漂う。そして大技の4回転トーループ+3回転トーループを完璧に成功。流れに澱みがなく、万雷の拍手を受ける。最後のトリプルアクセルも、ゆったりとしたフォームから着氷した。

「どれだけ当然に跳べているジャンプでも、緊張感や不安で揺らいでしまうことがあるので。ネガティブなことを考えず、"自分はできる"ということだけを信じて、その感覚に任せてできたのがよかったと思います」

 鍵山はそう振り返っているが、終盤も見どころだった。

 曲調が激しくなって、ボーカルが響く中、激情を解き放つようなスピン、ステップを披露している。スタンドの拍手に熱がこもり、物語のクライマックスのような情景に。そして最後のフィニッシュポーズ、主役はガッツポーズをしたあと、ピースサインも送った。リンクサイドに戻ってくる時には、コーチに向かって右腕を突き上げた。
 
 堂々の105.70点で、ショートは1位発進だ。

「会場に入ってからの練習は、(北京)オリンピックを思い出すような調子のよさでした。オリンピックも最初から最後まで調子がよく滑れて、あの時の体の状態以上で臨めるのがうれしくて。日本開催で、『頑張れ』と知ってる声もたくさん聞こえてきましたし。ショートは盛り上がるプログラムではないかもしれないけど、お客さんや自分を引き込める滑りをできたかなって思います」

 鍵山は、溢れ出る笑みを浮かべた。充実した戦いの実感が伝わってくる。

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