NHK杯は鍵山優真が首位発進 フィギュアスケート日本男子は切磋琢磨して「どんどん上を目指す」 (3ページ目)

  • 小宮良之●取材・文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

【SPは日本選手が上位独占】

「お、すご!!」

 ミックスゾーンで取材を受ける中、鍵山はマイクを持って質問を受けながら、思わず大きな声を出している。同じ日本人の三浦佳生が、100点を超える高得点を叩き出したのだ。

「あ、すいません」

 鍵山はそう言って我に返り、謝りながらこう続けている。

「周りの選手は、"僕のことを超えたい"とかもあるかもしれません。でも、僕自身は引っ張るよりも、上を目指していかないといけない、という立場で。みんなと同じ目線に立って、イリア(・マリニン)選手とか、他に強い選手もいるので、どんどん上を目指す意識でやっています」

 宇野昌磨という巨人が引退したあと、周囲には日本のフィギュアスケートを背負う姿を求められる。しかし、彼にとっては共闘している感覚か。切磋琢磨が実力に転換されているのだ。

 そしてSPが終わり、鍵山、三浦、壺井達也という日本選手が1、2、3位を独占した。
 
「今日は、みんなそれぞれがやるべきこと出し切った結果ですね。(鍵山の演技まで首位だった壺井が)いい流れを作ってくれて、パワーをもらえました。(演技の前に三浦に)『流れを作ってよ』と言われていたので、僕も頑張ろうってできましたね。みんなが100%を尽くした結果、(日本選手で)独占できたらうれしいなって」

 好むと好まざるにかかわらず、鍵山がトップであることは間違いない。
 
「明日(11日9日)は明日で、難しいプログラムを滑ることになります。僕としてはショートと同じで、練習以上を求めずに。(トータル)300点は超えたいってことはありますが、目指しているスケートを最初から最後まで滑りきる、というのが明日の目標なので。まずは、この間の西日本インカレで失敗した4回転フリップを含めて、安定した滑りができるように。カッコいいプログラムなので、見ている人が盛り上がる滑りをしたいです!」

 至高の演技は、優勝に直結する。フリーに向け、鍵山の視界は良好だ。

著者プロフィール

  • 小宮良之

    小宮良之 (こみやよしゆき)

    スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。

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