フィギュア世界女王・坂本花織が今シーズンのテーマに掲げた「CHANGE」 その真意は? (2ページ目)

  • 小宮良之●取材・文 text by Komiya Yoshiyuki

【スター性のある若手も台頭】

 そして同門の坂本に次ぐ競技キャリアを誇る三原舞依(25歳/シスメックス)は、巻き返しを期す。一昨年の全日本は2位だったが、昨年は調整の遅れで5位だった。もっとも、リンクに立った時の存在感は際立つ。プログラムを表現するスケーティング技術には定評があり、「集中力の天才」と称賛される"場を制する"輝きは唯一無二。観客の熱を演技に還元できる稀有な選手だ。
 
「まずは自分に勝たないと。選手として、まだ上に行きたいので」

 三原は言う。誰よりも自らに厳しいスケーターと言えるだけに、己を乗り越えたら、氷上で喝采を浴びることになるだろう。フリーは「レッド・バイオリン」で自らが楽器のようになって、運命の調べを奏でられるか。

 また、渡辺倫果(22歳/三和建装・法政大学)も虎視眈々(こしたんたん)と言ったところか。独特な色気のあるスケーターだが、ジャンプへの思いも強く「ショート&フリーで3本のトリプルアクセル」と目標を掲げる。

「孤独の美しさ、をテーマに滑りたいです。マイナスなイメージの言葉かもしれませんが、孤独のなかの美しさというのはあって。例えば月光はスポットライトのように一人ひとりを照らすので、個人スポーツであるフィギュアで自分を見つめて歩んでいけるように」

 そう語る渡辺は今シーズン、東京選手権でトリプルアクセルを入れた戦いをスタートさせている。

 ほかにも、青木祐奈、住吉りをん、河辺愛菜、松生理乃、山下真瑚など十分に世界で渡り合える実力者たちが控える。なかでも樋口新葉は今シーズン、東京選手権で優勝し、復活の狼煙(のろし)を上げている。北京五輪でトリプルアクセルを成功し、団体の銀メダルに貢献した実力は伊達ではない。
 
 そして次のミラノ・コルティナダンペッツォ五輪は年齢制限で出られないが、15歳の島田麻央、14歳の上薗恋奈は、「日本女子フィギュアの希望」と言える。昨年の全日本でそれぞれ3位、4位だ。
 
「試合の時、緊張はあります。けど、みなさんに見られているから緊張するというのはなくて、逆に見てもらっているほうがうれしい。応援してくださっている方々のためにも頑張れるって思うので、むしろ見てほしいです」

 そうインタビューで語っていた上薗は、スター性も十分だ。

 氷上で、彼女たちは咲き誇るだろう。その切磋琢磨の中、爆発的な輝きを見せられるか。

「失敗を恐れず」

 そう語った女王、坂本が中心のシーズンになることは間違いない。

著者プロフィール

  • 小宮良之

    小宮良之 (こみやよしゆき)

    スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。

【画像】島田麻央、上薗恋奈、高橋大輔...フィギュアスケート全日本ジュニア合宿フォトギャラリー

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