フィギュアスケート日本男子の次代を担う10代がジュニアGPで奮闘 海外のコーチからも称賛
【思わぬミスも攻める気持ち】
ジュニアグランプリ(GP)シリーズ・日本大会男子シングルの優勝候補として注目されていた中村俊介(18歳)は、フリーでの思わぬ結果に時折声を詰まらせながら記者の質問に答えていた。
ジュニアグランプリ日本大会で演技する中村俊介 ショートプログラム(SP)では3回転+3回転のコンビネーションジャンプが3回転+2回転に。「前半は完璧に近かった」と本人も言うほどの滑りだっただけに、いつもはミスをすることがないジャンプに思わぬほころびが出たことで焦ってしまったという。
日頃、コーチからは「ジャンプでミスをしてもステップやスピン(のレベル)を確実にとらないといけないよ」と言われているそうだが、「またあらためて言われたので、フリーでは落ち着いて臨みたいです」と中村は話した。
それでも中村はジュニアのなかでもトップクラスの質の高い滑りでSPは2位につけた。
試合前は「自信があった」と話した中村に、まさかの展開が訪れたのはフリー本番でのこと。着氷後しっかりと姿勢を保つことができずにステップアウトをしてしまい、トリプルアクセルでは痛そうな転倒もあった。
結果は総合8位。演技後、「全部のジャンプの軸がずれてしまって、立て直すことができずに崩れていってしまいました」と、なんとか言葉を絞り出した。しかし、ただ崩れていったわけではない。演技中の中村の目は折れることなく、どうにか立て直そうという強い意志を持ち続けていた。
中村は、昨シーズンはジュニアGPファイナルに進出するなど着実に実績を積んできた。今年はさらにレベルアップを目指し、勝てる自信をつけて臨んだ自国開催での大会だった。異変に気づいたのはフリーの最初のジャンプ、4回転トーループだったという。
「1本目の4回転トーループで軸が左に流れてしまって、そこから若干つられたかな、というのがあって。ただ、ふだんから練習では1本目で失敗しても他のジャンプをミスしないように練習していたので、そこを引きずってしまったのはメンタル面なのか、まだ練習が足りなかったのか。原因はわからないですけど(異変に)気づいたのは最初の1本目でした」
だが、予定していた4回転や3回転が、2回転や1回転となる「パンク」になることはなく、最後まで諦めず、攻める気持ちを持ち続けていた。
今大会は中村にとって悔しく、忘れられない大会になるだろう。だが、この経験はきっと大きなバネになるはずだ。
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著者プロフィール
山本夢子 (やまもと・ゆめこ)
スポーツライター。青森県八戸市出身。5歳からフィギュアスケートを習い始め、高校卒業まで選手として各大会に参加。その後、渡米し大学を卒業、就職。帰国後は、コピーライターとして広告制作に携わる。2005年からフリーランス。現在はライターとしてフィギュアスケートの専門誌を中心に執筆中。