フィギュアスケート世界国別対抗戦で感じた「健全な熱気」 どの選手にも拍手と声援を送るファンの姿と盛り上がりの要因 (3ページ目)
●盛り上がりの理由に「かなだい」と「りくりゅう」
世界国別対抗戦が祝祭のようになった理由は、もうひとつある。
2022−2023シーズン、日本のフィギュア界は隆盛を極めている。男子シングルでは宇野が世界選手権を連覇。グランプリ(GP)ファイナルには、優勝を飾った宇野だけでなく、佐藤、山本草太、三浦佳生の4人が出場した。
女子シングルでは坂本花織が同じく世界選手権を連覇。GPファイナルでは三原舞依が優勝し、渡辺倫果も4位と表彰台に迫った。
そして大きな変化としては、ペア、アイスダンス競技が脚光を浴びるようになった点が挙げられる。
ペアでは「りくりゅう」と呼ばれる三浦璃来/木原龍一がGPファイナル、世界選手権で優勝を飾り、ふたりの愛される雰囲気も含めて人気を呼んでいる。
また、「かなだい」こと村元哉中/高橋大輔も、世界選手権でアイスダンス史上、日本勢最高の11位になって躍進し、新しい可能性を示した。
とりわけ、高橋はあらためて「伝説」と語り継がれる存在になった。シングル時代、2007年の世界選手権と同じ『オペラ座の怪人』を、16年ぶりに同じ東京体育館で滑っている。
出場を辞退してきた埼玉での2度の世界選手権(2014年、2019年)に、アイスダンサーとして出場した。長年かけて熟成してきた日本のフィギュアスケート人気を、別種目で結びつける象徴的存在だ。
カップル競技の充実で、国内のフィギュア全体の熱気は確実に"分厚くなった"と言える。
来シーズンがすでに待ち遠しいが、しばらくはシーズンの余韻を楽しむように、各地でアイスショーが開催される。競技とはまた違ったフィギュアスケートを楽しめるだろう。
そこに生まれる熱気は、日本スポーツ界の誇りだ。
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著者プロフィール
小宮良之 (こみやよしゆき)
スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。
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