宇野昌磨「大きなミスをするとあやしいな」 世界フィギュア連覇を生んだとっさの判断とは? (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

●ジャンプ回避の裏に冷静な判断

 だが宇野は冷静な滑りをした。直前の6分間練習でも決めていた最初の4回転ループを3.75点の加点にして成功させる。

 次の4回転サルコウは回転不足の両足着氷で3.43点減点されるジャンプになったが、4回転フリップは4.24点の高い加点の完璧なジャンプ。そのあとのトリプルアクセルは空中で軸が少し動きながらも着氷と、上々な滑り出しとなった。

この記事に関連する写真を見る しかし、宇野にとって大きな得点源である、後半の3本の連続ジャンプは少し意外な形になった。

 ステファン・ランビエルコーチは「不安が残っていたフリップとループは落ち着いてやって、そのあとの3本のコンビネーションジャンプを力強くやればいいという戦略だった」と話す。

 全日本選手権では後半に4回転トーループ+3回転トーループ、4回転トーループ+2回転トーループ、トリプルアクセル+ダブルアクセル+ダブルアクセルと並べる構成だった。

 だが今回、宇野はフライングキャメルスピンのあとの4回転トーループは単発に抑え、続く4回転トーループも着氷を乱してとっさに1回転ループをつけるだけになった。

 そして、トリプルアクセルからの3連続ジャンプも、2本目のダブルアクセルの着氷が詰まって3本目をつけない連続ジャンプにとどめた。

 3本のコンビネーションジャンプが、実質的にはトリプルアクセル+ダブルアクセルのみというもったいない構成になった。しかも、4回転トーループは2本とも4分の1回転不足と判定された。

 そこには、宇野自身の冷静な判断もあった。

「昔は戦略とか他の選手の点数がどうだとかは考えず、全力でぶち当たるという感じでした。でも今はけっこう、これ以上のミスはいけないなという感覚でやっています。

 今回も4回転ループを降りて、4回転サルコウはちょっと厳しいだろうなと思っていたけどなんとか踏ん張れて、4回転フリップも降りられたので、あと1回は失敗しても大丈夫だけど、大きなミスをするとあやしいなというようなことを考えていたんです。だからいつもコンビネーションをやらなくなってしまうんです(笑)。

 それに今回の練習では、コンビネーションはそもそもできていなかったので。あそこで無理して2回転トーループをつけても、1回転の時との違いは1点ちょっとだと思います。

 それが必要だったら僕はやりますけど、この演技内容だったら何が必要か、というのはなんとなく計算している。トーループに2本ともqマークがつくとは思っていなかったけど、両方ともけっこうギリギリだったのであれはあれでいい選択だったと思います」

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