かなだいは日本勢初のトップ10入りなるか? 高橋大輔は世界フィギュア直前に「大丈夫」を繰り返した (3ページ目)
●世界の舞台へ「大丈夫」
この日のミックスゾーン、彼は「大丈夫」と何度も繰り返していた。
「試合で楽しむには、どれだけ練習してきたか、ってところが大事で。だから試合まで一日一日、ちゃんとしたいです。会場に入って、いつもどおりに過ごして」
高橋は言ったが、試合を楽しめるだけの練習をしてきた自負があるのだろう。ネガティブな要素を受けつけないバリアを身につけていた。あとは運が巡ってくるか。
「ここに戻ってくるために今までがあって。(2014年、2019年にさいたまでの世界選手権を出場辞退したのは)そういうことだったんだなっていう世界選手権にしたいですね」
高橋はそんな表現をしたが、やはり運はつかむものなのかもしれない。
「一日一日を楽しもうって思います。練習はたくさんやってきたので。この舞台を楽しむのが一番」
村元もそう言って、腹をくくっていた。
はたして、ふたりは入魂のプログラムの完成形を見せられるのか。全日本後のインタビューで「アイスダンスでバシッと決まった時の感覚とは?」と尋ねた際、高橋はこうたとえていた。
「手をたまたま上げた時、ボールを投げられて、あれってなっているうちに手のなかに収まっている感じですかね?」
それは、無心に近い感覚か。ふたりは、そこまで徹底してプログラム精度を高めてきた。それぞれの波長が合う瞬間、アイスダンスの魅力が溢れる。今はそれがすべてだ。
3月24日、かなだいはリズムダンス『コンガ』で、2度目の世界選手権の舞台に立つ。
著者プロフィール
小宮良之 (こみやよしゆき)
スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。
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