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かなだいは日本勢初のトップ10入りなるか? 高橋大輔は世界フィギュア直前に「大丈夫」を繰り返した (2ページ目)

  • 小宮良之●取材・文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Kyodo News

●『オペラ座の怪人』の完成形を見せられるか

「ゼロからのスタートだったんで、3シーズン目に全日本で優勝できたのも、なかなかないことで」

 村元はそう言って、高橋を賞賛していた。

「簡単にやっているように思う人もいるかもしれませんけど、正直、簡単ではなくて。大ちゃん(高橋)ができちゃうから、なだけで。

 理解力がすごくって。私が理解していないことも、大ちゃんは理解できているんだって思うこともあります。大ちゃんと一緒だったからこそ、ここまでこられたはずで」

 あらためて、ふたりの出会いは運命的だった。村元は五輪や世界選手権での出場を重ね、アイスダンス界の第一人者。

 一方、高橋は男子シングルで日本男子フィギュア界を牽引し、五輪でのメダル、グランプリファイナル王者、世界王者と幾多の「日本人初」の記録をつくってきた。

 そのふたりが会うべきタイミングで出会い、生まれた物語なのだろう。

 そして今シーズンのプログラムは、「完成形」に近づいている。特に『オペラ座の怪人』は彼らの代名詞になる予感がある。物語に登場するファントムとクリスティーヌが憑依した錯覚を受けるほどだ。

「『オペラ座の怪人』は、ディテールのところ、僕は特に後半が課題だったので、なるべくレベルがとれるように考えながら練習してきました。後半は足にくるところ、粘れないところがあるので。

 どこで力を入れて、抜くか、ペース配分も考えながらやってきました。もちろん、トレーニングの内容で体力も上げながら」

 37歳になる高橋は、肉体的な限界にも挑んでいる。シングル時代に4年ぶりの復活で全日本2位になったことも並外れているが、ルーキーとして別種目を追求する挑戦心は桁外れだ。

 今年2月の四大陸選手権後も、研鑽を積んできた。

「全体的に一つひとつのエレメンツを確実にこなすところから、細かいところまで。まずはフリーの最後のコレオエレメンツを新しく考えたところからのスタートでした」

 村元は、そう言って現状を説明していた。

「『オペラ座の怪人』の世界観も考えて、最後のところはコーチと『どうしよう』って。(コレオリフトの)スピニングムーブメントにしたのは、リスクがない、失敗もしづらいエレメンツで、しっくりくるかなって。

(公式練習では)100%ではなかったですけど、変えてからは通しでも一度も失敗していないので。そこらへんはたぶん、大丈夫だと思います」

 そこで、高橋が被せるように言った。

「大丈夫です!」

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