三原舞依「こういう時こそ自分の底力を」。五輪落選の「どん底」からはい上がり、全日本フィギュアで見せた感謝の舞い (2ページ目)

  • 小宮良之●取材・文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

【全部の関節を広げて、思いを込めて】

 12月22日、彼女はショートプログラム(SP)に十数年間のスケート人生をかけた『戦場のメリークリスマス』で挑んでいる。

 しっとりとしたピアノ音楽のなか、生きる強さがにじみ出る。まさに三原の人生が投影されていた。病気で1シーズンを棒に振り、自身の体調と相談しながら復活し、四大陸女王になった。そして今シーズン、GPファイナル女王にまでなった姿はどれだけの人を勇気づけたか。

 冒頭のダブルアクセルをきれいに降りると、やや苦戦していた3回転フリップも難なく成功。3回転ルッツ+3回転トーループはセカンドが4分の1回転不足をとられたが、高得点を出した。スピン、ステップとオールレベル4。74.70点で、1位の坂本に僅差の2位と絶好のスタートを切った。

「最後のステップからバレエジャンプのところまで、大きく見えるように。全部の関節を広げて、全身を動かして。1年分の思いを込めました」

 終盤、三原は観客の拍手を一身に浴びた。その演技は、自分を信じてくれた人たちへの愛情表現だった。

「氷に乗って、バナー(横断幕)を見ると疲れも吹き飛ぶというか。幸せな気持ちにしてもらえます。『応援しています』『元気をもらえます』と言われるのが、どれだけうれしいか。その方々に少しでも届くような演技をしたいな、と思っていました」

 感謝でそこまで強くなれる人間がいるのだ。

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