村元哉中・髙橋大輔、全日本フィギュア首位発進も「お互いのリズムのズレが出た」。初制覇に向け「何も考えない」がテーマ (3ページ目)
【全日本選手権初制覇へ】
「最高のクリスマスイブにしたいです」
髙橋はスポーツ紙の見出しになるような言葉をサービスしながら、12月24日のフリーダンス(FD)への意欲を語っていた。
「フリーは特にエレメンツに向かうつなぎのところとか、細かい調整をしてきました。今までもやりにくかったわけではないですが、少し疑問があるなかでやっていて、こっちのほうがいいかなって修正ができて。
ワンフットやダイアゴナルステップのところ、僕は取りこぼしがあったし、集中的にレッスンを受けました。スムーズにエレメンツに入れるようになり、全体的に流れがよくなったと思います」
かなだいは、確実に次のフェーズに入った。カップル結成3年目、進撃は続く。2年目では、四大陸選手権で日本勢として史上最高位の準優勝、世界選手権にも出場したが、今シーズンは、ISUチャレンジシリーズ・デニステン・メモリアルで国際大会初優勝を経験し、NHK杯でもFDでは最終グループに入り、日本勢ではダントツでトップに立っている。
ふたりが日本フィギュアスケート界に与える影響は、広がり続ける。その人気のおかげで、アイスダンス自体が競技として報道される質も量も増えた。普及活動に及ぼした貢献度も計り知れない。たとえば今回のアイスダンスは、カップルが増えて2グループで大会を争うことになった。
彼らは全日本選手権で、ひとつの結実を見せようとしている。
「(五輪出場がかかった昨シーズンと比べて)今は変なプレッシャーを感じず、練習から動けているという違いはあります。昨シーズン後半はいろいろと考えすぎてしまったので、今回は『何も考えない』っていうのをお互いで言い出して。それを(全日本の)テーマにしながら。欲を出さず、練習してきた以上のことはできないので」
髙橋は明朗な声で言う。練習に近いパフォーマンスを出すことができたら、国内では負けないところまで彼らは到達した。初の全日本優勝で、世界選手権出場へ。
12月24日、FDは最終滑走になる。「オペラ座の怪人」の哀しみや狂気や恋慕がクライマックスを彩るだろう。それは次の物語へのプロローグだ。
【著者プロフィール】
小宮良之 こみや・よしゆき
スポーツライター。1972年、横浜生まれ。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。
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