宇野昌磨は「練習につながる試合、試合につながる練習」を意識。優勝したスケートカナダで見えた精神面の安定 (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Getty Images

『これ!』というのを見つけられた

 そこでの気づきを、宇野は翌日のフリーで活かした。

 フリーの前半は音の流れもゆるやかで、ジャンプを力強く跳びにくい曲調。そのなかで4回転ループは尻が下がる着氷になって、続く4回転サルコウと4回転フリップは4分の1の回転不足と判定される耐えるジャンプになった。

 次のトリプルアクセル+ダブルアクセルをしっかり決めてリズムを取り戻すと、曲調が力強くなった後半に、4回転トーループ+3回転トーループをきれいに決めた。

 そのあとのトリプルアクセルと4回転トーループは回転不足と判定されて得点源にはできなかったが、全身を大きく使って滑るステップシークエンスは宇野らしさを存分に出す滑り。小さなミスを連発したが、183.17点を獲得して合計は273.15点。最終滑走の三浦が得点を伸ばせなかったため、7.86点差をつけて優勝を決めた。

 昨年のNHK杯に続く、GPシリーズ7勝目。それでも宇野は落ち着いた表情を崩さなかった。

「今日の演技はショートと同様に、練習でのいい部分も悪い部分もしっかり出た演技だったと思います。ただショートで失敗した4回転トーループ+3回転トーループに関しては、一日という短い期間だったが、『これ!』というのを見つけられたので、次のNHK杯に向けていい練習ができるなと思いました」

 自身の演技を振り返り、続けた。

「最近気をつけているのは、試合で練習以上のことをやろうとはしないことです。仮に試合で練習以上ができたとしても、それはその場限り、その日限りの演技なので。だから練習につながる試合をするために、試合につながる練習をするために......。どちらも活きるようにするために、いつもどおりにするということを心がけています。

 今回は回転不足を多く取られてはいるけど、より回転を回さなくてはと思うのではなく、いいジャンプをすればしっかり認定されるジャンプを跳べるという自信はある。今日の演技は自分にとって本当にいい課題になったと思うし、このまま続けていけば僕はいい演技ができるのではないかな、と考えています」

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