本田武史にあらためて聞く「スケーター羽生結弦と、彼のいない今季の男子フィギュア」 (3ページ目)

  • 辛仁夏●文 text by Synn Yinha
  • 能登直/JMPA●撮影 photo by Noto Sunao/JMPA

ポスト羽生結弦のフィギュア界

 さて、世界を席巻した羽生結弦とネイサン・チェンがいない今季の男子は、宇野昌磨選手と鍵山優真選手が金メダル争いを繰り広げると思います。そんななか、米国の新鋭、イリア・マリニンが4回転アクセルを成功させるかどうかも興味深いところです。世界ジュニア王者のマリニンは昨シーズンの世界選手権で衝撃的なデビュー(SPで100.16点をマークして4位発進だったが、フリーで11位に沈んで総合9位だった)を飾っているので、彼がどういうふうに成長してくるかというところも見どころのひとつになってきます。

 過去の歴史を振り返ると、オリンピックの翌シーズンは、ジュニアからシニアに上がってきたニューフェイスや、今まではそこまで知られていなかった選手が、パッと上位に食い込んでくるということがありました。そういう可能性はゼロではないと思います。ただ、宇野選手と鍵山選手に関しては、今、持っている能力もそうですし、安定感という部分を考えると、やはりメダル争いの中心になると思います。

 どの選手も絶対に経験する世代交代の節目というのがあります。僕が世界に出ていった時代は、ちょうどエルビス・ストイコ(1994年リレハンメル、98年長野の両五輪で銀メダル獲得)やトッド・エルドリッジ(96年世界王者)が第一線から抜ける時でした。その後、アレクセイ・ウルマノフ(リレハンメル五輪金メダリスト)からイリヤ・クーリック(長野五輪金メダリスト)と時代は流れて、彼らが引退したあとの世代としてトップに上がってきた自分が世界選手権(2002年と03年)で銅メダルを獲るようになりました。そして僕のあとに続く選手とし、髙橋大輔選手らが出現してきました。

 フィギュアスケートという競技において、羽生選手という大きな存在がなくなったことについては、慣れるしかありません。選手であれば誰もが世代交代の流れを経験することになるので、置かれる立場に一喜一憂するのではなく、自分がどういう演技をしていくかが重要になると思います。

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