宇野昌磨「現状維持では置いていかれる」。新シーズンのテーマ「自分」に込めた思いとは (2ページ目)
新ルール適用にも「大きな変化ない」
新シーズンの宇野は、SPは『Gravity』、フリースケーティングは『G線上のアリア(+もう1曲)』で挑む。新ルール適用もあって、微調整は必要になるだろう。ただ、そこにストレスは感じていないようだった。
「僕のなかでは大きな変化はないです」
少なくとも、宇野自身はそう説明している。
「今までやってきたことと変わらず、加えてコンビネーションのところで、ジャンプ・シークエンスでアクセルを入れることだったり(※ジャンプ・シークエンスの基礎点が0.8倍から1.0倍に変更)、スピンが少し(レベル4をとるのが)難しくなったり。ルールに沿って変えるところはいくつかありますが、今までの練習を大きく変えないといけないわけではなく、大丈夫かなと」
宇野は自らが変わることで適応し、王者としてフィギュアスケート界をけん引していくのだろう。彼にとっての「自分」とは小さな殻に閉じこもるものでも、傲然と他者を遠ざけるものでもなく、むしろ周りを引き寄せるもので、それによる「変身」を意味する。とことん自分と向き合い、無心にまでたどり着いた時、その現象は起こる。
「僕は負けず嫌いではあるんですけど、自分のためだけにスケートをするのが得意じゃなくて」
世界選手権後、宇野は気持ちを吐露していた。それは「自分」をテーマにした場合、矛盾しているように思えるが、ひとつの真理だ。
「近しい人のためなら滑れると思っていて。どういう演技で満足してくれるのかわかっているので、リラックスしてできるのかなと。ここ数年、なかなか成績が出ないなかでも応援してくださった皆さんや、自分が何もできていない時にお世話になったステファン(・ランビエルコーチ)のために、すばらしい成績を残したいというのがあって」
そのゾーンに入った宇野は、とびきり強い。世界選手権、フリー『ボレロ』の最後のステップでは一瞬、笑顔を浮かべている。競技中にもかかわらず、楽しさに身を浸し、観衆の熱気で輝きを増す。その時、彼は無敵だ。
「アイスショーにたくさん出て、そこで新しいプログラムを皆さんに見てもらい、少しずつ完成を目指していきたいなと考えています。試合の何週間か前になったらスイスへ行って、ステファンコーチと練習をして。そんな予定をざっと立てています」
新シーズン、宇野は王者の舞を見せられるか。その答えは彼だけが知っている。
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