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樋口新葉が完璧なトリプルアクセル。一時は諦めかけるも初着氷から4年半の道のり (2ページ目)

  • 辛仁夏●文 text by Synn Yinha
  • 能登直●写真 photo by Noto Sunao(a presto)

「五輪の借りは五輪でしか返せない」と言われるが、北京五輪シーズンの今季、五輪の舞台で活躍することを目標に掲げる樋口には期するものがあるに違いない。

 ジャパンオープンで見せた鮮やかなトリプルアクセルは、無駄な力を使わない軽やかで豪快なジャンプだった。「特別な練習をしてきたわけではなく、気持ちで締めるという考えで練習してきただけ」と、シンプルな心境に至ったことが功を奏したようだ。

 練習での初着氷から初めて試合で成功させるまで4年半の月日がかかった。一時は諦めかけたこともあったが、コロナ禍の昨季は出場する試合が減った一方で、じっくりとジャンプ練習をする時間が取れた。そのおかげでトリプルアクセル以外のジャンプが安定し、トリプルアクセルの練習に費やす時間的余裕も生まれたという。

「ほかのジャンプのミスが少なくなって余裕が出てきたので、トリプルアクセルを練習する余裕がたくさんあった。練習時間が多くなって、気持ち的にも余裕をもって練習に臨めてきているのがよかったんじゃないかなと思います。まだ、アクセルを跳べても『あっ、跳べた』と思って次のジャンプに向かってしまうので、跳べて当たり前と思える練習をして、よくても悪くても動揺しないようなプログラムにしたいです」

 勝負のシーズンの新フリーは、熱い思いを込めた躍動感と迫力ある曲調の『ライオンキング』となった。印象的な振り付けも取り入れるなど、この作品にスケート人生のすべてをかけるという意気込みは強い。

「自分はいままでいろいろなプログラムを滑ってきたんですけど、いろいろなジャンルのプログラムが合わさった、自分のすべてが入っているプログラムにしたいと思って『ライオンキング』を選びました。自分の人生を全て伝えられるようなプログラムにしたいと思います」

 今季はフリーだけでなく、ショートプログラムでも演技冒頭にトリプルアクセルを組み込むつもりでいるという樋口。五輪代表選考会となる12月の全日本選手権まで2カ月半。北京五輪の本番まであと半年もない。残された時間は多くないが、やるべきことをしっかりと見据えて前進するだけだ。

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