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髙橋大輔が見せた存在感。五輪シーズンに新たな表現の世界を切り拓く (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

 砂漠の王都のような場所から、旅は始まる。オリエンタルな匂いのする王朝、ヨーロッパの高貴な宮殿、フラメンコの曲調が似合い、マタドールが闊歩する町、そして大航海で波濤(はとう)を越え、にぎやかなサンバの宴に興じる。そのたび、出演者の衣装は次々と変わり、プロジェクションマッピングで華やかに世界が演出された。

 髙橋の心象風景か、もうひとりの自分と対峙するように田中刑事とふたりで滑るシーンは文学的だった。

「(リュクスでも同じメンバーになった)前回の氷艶2019のメンバーは本当に仲がよく、また一緒に仕事をできたことがうれしいです。柚希礼音さんの黒燕尾は見応えがありますし、平原綾香さんの歌も最高です。そして俳優の西岡徳間さん、福士誠治さん、波岡一喜さんの芝居の演技力のすごさ。フィギュアスケートとの融合で、また新しいタイプのスケートショーになったと思います」

 髙橋は言う。豪華な俳優陣や歌手が、エンターテイメントの深みを作っていたことは間違いない。また、アイスダンスでカップルを組む村元哉中との演技は異彩を放っていたし、トリノ五輪金メダリストの荒川静香の表現力は格別だった。織田信成、鈴木明子、村上佳菜子といったスケーターたちも鮮やかに氷上を彩っていた。

 しかし、主演である髙橋の存在感は、やはり唯一無二だった。例えば、旅の終わりのクライマックス、鳴り響くシンバルの音を拾い、そのたびに高まる激情をスケーティングで表現し、観客を陶酔に誘っている。その時、光の王子は自らを解き放って、金色を身にまとうのだが......。

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