羽生結弦がネイサン・チェンと再戦。ライバルに勝利するための条件は (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

 そのため、今年3月24日からスウェーデンのストックホルムで開催される世界選手権は、羽生にとって昨年できなかった挑戦の場となる。

 羽生の今シーズン初戦となった昨年12月の全日本選手権は、新プログラムの『レット・ミー・エンターテイン・ユー』(SP)と『天と地と』(フリー)の初披露の舞台でもあった。SPはチェンジフットシットスピンが得点にならなかったが、内容的にはジャンプをすべて確実に決めるノーミスの演技。フリーもループとサルコウ、トーループ2本の4回転4本の構成をノーミスで滑り、合計319.36点で優勝。コロナ禍のため国内に残り、コーチ不在で練習する中で「精神的に落ち込み、どん底の状態も経験した」が、全日本で見せた演技は辛い時期を乗り越えてきたからこその力強さがあった。

 全日本へ向けては、現状で確実に跳べるジャンプで構成を早めに決め、精度を上げる形で大会に臨んだ。SPは4回転サルコウで入って、4回転トーループ+3回転トーループの連続ジャンプを跳び、演技後半にトリプルアクセルを入れる。そしてフリーは前半に4回転ループと4回転サルコウを入れ、後半は4回転トーループ+3回転トーループ、4回転トーループ+オイラー+3回転サルコウで、最後に単発のトリプルアクセルという構成だった。

 全日本の演技はノーミスだったとはいえ、まだまだ伸びしろがある。技と技のつなぎの難度が高いプログラム自体の完成度や、ジャンプのGOE(出来ばえ)加点、ステップとスピンの取りこぼしの修正をすれば、演技構成点も自ずと伸びてくるだろう。

 対して1月の全米選手権のチェンは、SPでは前半に4回転ルッツとトリプルアクセルを跳び、後半に4回転フリップ+3回転トーループの高難度の構成に挑んだ。スピンとステップもレベル4を獲得する完璧な滑りで113.92点を出している。

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