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三原舞依が求めるのは善戦ではない。2021年は大人の「アスリート」に (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

SP演技の三原SP演技の三原 しかし、彼女は命を燃やすような演技を見せ、試合を重ねるごとに逞しさを見せてきた。近畿選手権では3位、11月の西日本選手権では2位に食い込む。そして12月のNHK杯も観客の拍手喝采を受け、有力選手との争いで4位。可憐な体が宿したエネルギーをすべて使い切るようなスケーティングだった。

 ただ、本人は自身の滑りに注文を付けていた。

「最初から最後まで、まだまだ力の弱さがあります」

 彼女は、全日本と同じ悔しさをNHK杯の後でも語っていた。それは病気を患う前、世界のトップで戦ってきた者の矜持か。"善戦"を求めているわけではないのだ。

 その点、全日本のSPは三原らしさが出ていた。『イッツ・マジック』の恋をして魔法をかけられたように幸せを感じる主人公を、完璧に演じきっている。

 冒頭、3回転ルッツ+3回転トーループという高難度のコンビネーションジャンプを確実に決めた。人差し指を立てると、光の粒子がきらめきそうだった。ダブルアクセルもきれいに着氷。スピンは上体が深く沈み、回転も鋭かった。そして3回転フリップも成功。そこからのスピン、ステップは非の打ちどころがなく、観客を魔法がかかった世界にいざなった。

「6分間練習から直前まではすごく緊張していたんですけど、氷に乗った途端、緊張がどこかにパーッとなくなっちゃって。(演技が)始まる前はなんだか泣きそうでした。スピン、ステップとレベル4を取れたのが嬉しくて。中野(園子)先生と朝の練習で、『ここ、ここ』って直して。その結果が出て、最後まで滑ることができました」

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