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羽生結弦、5回目の全日本選手権優勝で見せた未来への強い意志 (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

優勝を決め、笑顔を見せる羽生優勝を決め、笑顔を見せる羽生 さらに昨シーズンを振り返り、吐露した。

「ともに2位だった全日本選手権とグランプリ(GP)ファイナルのこともあり、自分が成長していないんじゃないかなとか、だんだん勝てなくなっているのではないかなとか、そういう思いがあって、一瞬、『戦うのが疲れたな』と思った時期もあった」

 だが、コーチと離れ、ひとりで練習して落ち込んだり、考えを巡らせたりする中で、戦いの中で得られる達成感や、試合があるからこそ苦しみを乗り越えられることなど、競技を続けて向き合うことが「やっぱり好きなんだ」と、あらためて感じたという。

 大河ドラマの『天と地と』は、「義」を重んじた武将・上杉謙信の物語だ。謙信の戦いに対する考え方や、そこにある美学。さまざまな規制がある中で葛藤し、最終的に出家した人生。そうした悟りの境地へ達した謙信の価値観と、今の自分の思いが少し似ていると感じて、羽生は思いをリンクさせながら滑ったと話す。

 この曲に流れる、琵琶や琴の音色は印象的だ。その音と演技のイメージを、羽生はこう説明する。

「最初の琵琶は、曲の流れが表しているようにある意味戦いへ行く準備と決意に満ちている感覚です。最後のスピン時の琵琶は、もともとあった音ではなく、曲と重ねた(このプログラムの)オリジナル。そこはコレオステップの時に、もう戦いたくはないのに守らなくてはいけないという意味で戦う気持ちや、最後に(上杉謙信が)出家する時に自分の半生を思い描いているようなイメージで重ねてみました。

 琴の音は『新・平家物語』の音も使っていますけど、どちらかというと日本風に持っていきたかったところもあったし、ステップシークエンスでは信玄公との戦いの後で霧に包まれて離ればなれになった時に、自分と向き合っているようなイメージで。自分と向き合いながら心臓の鼓動とか血液の脈動を感じ、スーッと殺気が落ち着いていく感じを伝えられたらいいなと考えました」

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