2020.12.27

羽生結弦、5回目の全日本選手権優勝で見せた未来への強い意志

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

12月26日、全日本フィギュアのフリー演技をする羽生結弦12月26日、全日本フィギュアのフリー演技をする羽生結弦  全日本選手権ショート・プログラム(SP)首位発進後、翌日のフリーに向けて羽生結弦は「まずはしっかりと体を回復させることが大事だと思います」と話した。フリー当日の午前の公式練習では、落ち着いた雰囲気が印象的だった。

 体を慣らしてからステップを確かめた後、3回転ジャンプから跳び始め、トリプルアクセルを経て4回転ジャンプに移ったのは練習開始から20分ほど過ぎた頃。4回転トーループ+3回転トーループから跳ぶと、4回転サルコウ、次のトリプルアクセルの連続ジャンプにつなげた。それから冒頭に予定する4回転ループ、4回転サルコウを跳び、前の鍵山優真の曲かけ練習が終わる直前には、再度柔らかい跳び上がりで4回転ループをきれいに決めていた。

 そして、羽生は曲かけで最初の4回転ループを軽やかさもあるジャンプで難なく跳ぶと、その後の4回転サルコウとトリプルアクセル+2回転トーループ、3回転フリップまで流れの中で決めた。さらに少し間を取って琴の音に乗ってステップを滑ると、後半に入れた4回転トーループ+3回転トーループと、4回転トーループ+1オイラー+3回転サルコウ、トリプルアクセルとすべてのジャンプをきれいに跳んだ。10本跳んだ4回転はすべてミスなく終え、前半と後半のジャンプへの流れを確認して練習を終えた。冷静に集中しきった公式練習は、夜のフリーへの準備が心身ともにできていると感じさせた。

 迎えた夜の本番。羽生は、1969年のNHK大河ドラマ『天と地と』のテーマ曲で滑り出すと、計算された動きの中で力みのない4回転ループを難なく決め、4回転サルコウ、トリプルアクセル+2回転トーループ、3回転ループと、流れを途絶えさせない。さらに後半も力む素振りも見せず、4回転トーループ+3回転トーループと4回転トーループ+1オイラー+3回転サルコウ、トリプルアクセルを鮮やかに跳んだ。SPでは4回転2本に不満を持っていたが、この日は「これぞ羽生結弦のジャンプ!」と強くアピールするような、見事なノーミスのジャンプを続けた。

 羽生は演技後にこう話した。

「まずは自分自身、このプログラムに思い入れがあって曲を聞けばすごく感情も入るし、振りの一つひとつにもいろんな意味を込めています。そうした中でもやっぱりジャンプを完成させないと、プログラムの一連の流れとして伝わるものも伝わらなくなってしまう、と。本当に自分が伝えたいものが、このプログラムで見せたかったことが、ジャンプが途切れなかったという意味でも、少しは見せられたのかなと思います」