羽生結弦、いよいよ今季初戦。新プログラムのお披露目はあるのか (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

 そこで羽生は、ひとつの確信を得た。ノーミスで滑った四大陸選手権の『バラード第1番』は、自身の世界最高記録を更新する111.82点の演技になった。羽生は演技後に納得の表情を見せていた。

「これまでの『バラード第1番』の中で、一番良かったと思っています。『秋によせて』を演じたからこその表現の仕方や深みも出せた。何より曲をすごく感じながら、クオリティーの高いジャンプを跳べたことも、このプログラムならでは、と感じています」

『秋によせて』を滑っている際、たびたび口にしていたのは、「ジャンプをどう跳ぶか」ということだった。静かな曲調の中では余韻を持たせるように静かに跳び、強い音の場面では力強いジャンプを跳ぶ。難度の高いジャンプであろうと、ただ跳ぶだけでなく、曲に合わせた表現のひとつと考えていたのだ。

 そして、四大陸選手権のSPでは、ジャンプを含めて最初から最後まで流れが途切れない滑りを実現させた。「シームレス」と羽生自身が表現する演技だった。フリーはミスがあり、それを再現することができなかっただけに、次戦となるはずだった3月の世界選手権はSP、フリーともに、シームレスな演技を目指していた。

 しかし、コロナ禍で2020年の世界選手権は中止に。それから約9カ月、全日本の舞台で、追求してきた演技を目指してくるだろう。

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