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宇野昌磨はあえて自らマイクを請い、
羽生結弦について語り始めた (2ページ目)

  • 辛仁夏●文 text by Synn Yinha
  • 能登直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

 今オフには、幼少時から師事してきた山田満知子コーチと樋口美穂子コーチのもとを離れた。新たなコーチと練習拠点を探していたが、シーズンが始まってもなかなか適任者が見つからなかった。そんな中で迎えたグランプリ(GP)シリーズは、初戦のフランス杯からつまずいた。SPもフリーも「ボロボロの演技だった」と本人が振り返るほどで、自己ワーストの総合8位。予想外の惨敗後、スイスに拠点があるステファン・ランビエールコーチのところに駆け込み、練習を見てもらった。

 続くロシア杯では臨時コーチとして大会に同行してもらい、アドバイスを受けたことで調子を取り戻して総合4位に。4年連続で出場していたGPファイナルへ進出することはできなかったが、調子は上向いていた。その後も、スイスで指導を受けながら、全日本選手権に向けて練習に取り組んできた。島田高志郎の専属コーチであり、日本でのアイスショーにも頻繁に出演している日本通のランビエールコーチは、「自らが求めていたコーチ像にぴったりだった」と言う。

「フランス大会が終わってから、そこで気持ちを切り替えられた。あのときのボロボロの試合が終わった時点で、そのときに自分が勝手に背負ったもの(『強くならなくてはいけない』『勝たなければいけない』という気持ち)を下ろしたというか。いま振り返ると、フランス大会が"あって一番よかった試合"でした。それがあったからこそ、この場所(全日本優勝)にいられると思っています。

 ステファンコーチのところで練習することになって、またスケートが楽しいと気づかせてくれたし、スケートを楽しみたいと思うようになりました」

 表彰台の真ん中に立った宇野は、神妙な面持ちで表情は硬く、ちょっと気恥ずかしそうでもあった。それは右隣りに、その背中を追いかけ続けてきた偉大な先輩がいたからかもしれない。メダリスト会見では「どうしても言いたいことがある」と、自らマイクを請い、こう切り出した。

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