髙橋大輔がシングルのフィナーレで示した、あきらめずにやり続ける姿
全日本フィギュアスケート選手権を前にしたインタビューで、髙橋大輔は少し悟ったような顔つきでこう答えていた。
全日本選手権で、シングル最後の演技に臨んだ髙橋大輔「(昨年は目標に掲げて達成した)最終グループ入りは、昨年よりずっと難しい。表彰台はもっと。今年はそんなにうまくいかないですよ。自分も、ずっとスケートをしてきたからわかります」
しかし、昨年は2位という奇跡を起こした。
「昨年がよすぎただけですよ」
髙橋は優しい口ぶりで言いながら、こうも続けていた。
「でも試合って出るからには、少しでも上の順位を狙うじゃないですか? 僕自身、無理だな、と思います。でも昔からそうですけど、高いところを目指していないと、そこには絶対にたどり着けない。優勝目指して、4、5番なのも当たり前で。僕にとって、優勝は無理だけど表彰台はわずかな可能性、奇跡としてはあって、そこを目指すつもりで」
たしかに、髙橋はそうやって物語をつくってきた。2010年のバンクーバー五輪では、右ヒザ前十字靭帯断裂及び半月板損傷から奇跡的な復活を遂げ、メダリストになっている。
「復活劇をつくる!」
髙橋にはその確信があったという。その後も、彼は歴史をつくっている。男子シングルで2010年に世界選手権優勝を果たしたあと、2012年グランプリファイナル優勝も達成した。どれも、日本人男子初の記録なのだ――。
最後の舞台となった全日本で、髙橋は勝負を捨てずに臨んでいる。
しかし結果から言えば、ショートプログラムが14位、フリーは10位。総合では12位に終わった。それが、シングルスケーターとして最後の記録である。
「演技自体は、ショートも、フリーもどっちもボロボロでした」
髙橋は言う。
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