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全日本で予想外の結末も、羽生結弦の真の強さは「こんなもんじゃねえぞ」 (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

 予想もしていなかったイメージの狂いが、最も安心して跳べるはずの3回転ルッツで出てしまった。それが彼の精神状態に与えた影響は大きかっただろう。

「ルッツが抜けてからはいろいろ考えて頭を使っていました。どこで3回転を増やせるかなとか、どこでより高い点数を稼ごうかなということも考えて。やれることは限られているけど、それでも食らいついてやろうと思っていました。でも、やろうとしてもできなかったということです」

 羽生はそう分析したがその反面、「そんなリカバリーだったら意味がないな」という思いも浮かんでいたとも言う。

 羽生は次の4回転トーループでも着氷を乱すと、そのあとの4回転トーループからの3連続ジャンプでは最後の3回転フリップの着氷でよろけた。さらにトリプルアクセル+3回転トーループでも着氷を乱し、最後のトリプルアクセルでは転倒。得点源の3本の連続ジャンプは、すべて回転不足を取られる結果でフリーの得点は全体3位の172.05点。合計は282.77点で、4年ぶりの全日本は2位にとどまった。ショートプログラム(SP)2位の宇野昌磨が、GOE(出来ばえ点)減点は着氷を乱した3回転ループのみにとどめ、合計290.57点で優勝した。

「弱いなって思いますね。本当に弱っちいって。ループもトーループも跳べないようじゃ話にならないし、アクセルも跳べないようじゃ本当に話しにならない。悔しいしかないです。次へ向けて頑張ります。強くなります」

 いつもとは違い、動揺が抜けないままの雰囲気で話していた羽生。NHK杯からの3連戦の疲労は予想以上に大きかったと言える。この3連戦は、歴代世界最高得点をNHK杯とグランプリファイナルで連発した2015年にも経験している。その時も高得点を連発したあとの全日本は疲労が溜まり、優勝はしたものの得点は286.36点にとどまっていた。

 だが今回は、ファイナルではネイサン・チェン(アメリカ)に敗れており、歴代世界最高得点を出した4年前とは異なり高揚感もない状況。しかも今季のファイナルのフリーでは、持てる力をすべて振り絞る演技で、その疲労が残ったまま。全日本へ向けては調整らしい調整もできなかった。

「調整はうまくいかなかったですね。何か、日々体が、ドンドン劣化しているような感じはあったし、ショートの時からずっと変だなと感じていた。それでも僕は恵まれているので、本当にいろんな人たちが支えてくれて、体も今できる最高の状態にしてもらった。ただそれをしてもらったうえでのこの結果なので、正直言って僕の実力と技術が足りなかったなという感じです。それでも死力は尽くしたと思います」

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