苦悩するザギトワ。17歳の女王は「技術」で4回転時代を戦い抜く (2ページ目)

  • 小宮良之●取材・文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

 ザギトワはシニアデビューシーズンに、2018年平昌五輪で金メダル。その後は肉体的な成長の変化に苦しむも、2019年3月の世界選手権では優勝した。女王の時代かと思われたが、今度は国内の若手が著しい台頭を見せる。今シーズンのグランプリシリーズではフランス杯でコストルナヤの後塵を拝した。アレクサンドラ・トゥルソワ(15歳)、アンナ・シェルバコワ(15歳)の2人もそれぞれグランプリシリーズで優勝。世界女王は激しく追われる立場だった。

 フリーの「クレオパトラ」の曲かけ練習では、リラックスした様子で3回転ルッツなど難易度の高いジャンプを次々に成功させ、右足を高く上げた難しい入り方からのダブルアクセルも難なく決めていた。リンクサイドでは、コーチと会話を交わしながら、シャツをめくって鍛えたお腹を見せ、リラックスした姿があった。

 コストルナヤの方が、ジャンプは不調に見えた。

 しかしショートプログラム、冒頭で記したようにザギトワが後れをとっている。演技構成点は、35.69で1位。そこで負けなかったのは、女王の意地だったか。

 ザギトワは切ない様子と音と調和させ、一瞬で氷上に物語を作り上げた。イスラエル系スペイン人歌手、ヤスミン・レヴィが情感を込めて歌い上げる「Me voy」はスペイン語で「行くわ」と訳せるか。強く慕う恋人と別れる歌だ。

 曲が佳境に入ったとき、ザギトワは右足を高く上げながら、3回転フリップを決めたあと、コンビネーションでループを試みた。しかし、これが失敗に終わる。そこで曲の合いの手が入って、終盤に向かう。彼女は無念さを押し込めながら演じ切っている。

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