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宇野昌磨に戻った笑顔。感情を伝える相手「ステファンがいてよかった」

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

 11月16日のグランプリ(GP)シリーズ・ロステレコム杯のフリー、宇野昌磨は表彰台を狙ったが、演技終了後に苦笑いを浮かべてしまう結果になった。
ロステレコム杯で4位に終わった宇野昌磨ロステレコム杯で4位に終わった宇野昌磨「4回転フリップは跳べる気がしなかったので、昨日ステファン(・ランビエル)と話して『サルコウをやってみたら』と言われて。『跳べなくてもいいからとりあえずはやって、そのあとをまとめることが大事』という話をして、サルコウに変えることを決めました」

 宇野がこう話すように、朝の公式練習から挑戦していた4回転サルコウを冒頭に持ってきた。だが案の定、転倒。それだけではなく、次に予定していた4回転トーループ+2回転トーループは、ジャンプに入る構えをとっただけで跳ばずにスルーしてしまった。

「サルコウを失敗してコケたら、左足が靴の中で動いてズレてしまったんです。それでどうしようかと思って、『ワンチャンス、跳べるかな』とも考えたけど、跳ぶ瞬間に『でも無理だよな』と思ったらスルーしていて......。『おっ』と思ったけど、そこから『どうしよう!』ではなく、笑いながら『どうしよう......?』という感じだった。

 とりあえずもう1本(のジャンプ)をどこに入れようかとずっと考えながら滑っていて、『後半になればなるほど忙しくなるな』と考えていたけど、入れるところが全然なかった。でも終わってみたら意外と後半もまとまっていました」

 靴の中の足のズレは、「少し滑れば直るだろうなと思っていた」とおりすぐに直った。その後、リカバリージャンプを入れられなかったが、「靴のズレを気にするよりスルーのインパクトが強烈だったので、そのおかげか次のトリプルアクセルは練習どおりに跳べました」と言うように、トリプルアクセルはGOE(出来ばえ点)加点2.74点を獲得する出来にした。

「そのほかのジャンプも練習どおりに跳べたので、あのスルーはよかったということになりますね。本来やってはいけないし、選手としては『どうかな?』という行為かもしれないけど、それが何か、逆に気持ちの切り替えになるポイントになった」

 宇野は、すべてのジャンプが終わってから滑っているはずのステップシークエンスの最中も、「とりあえず何かを跳ばなければ点数にならない」と考えていた。だが、自分が4回転+2回転を跳んだのか跳んでないかも忘れてしまうほど、何も考えられなかった。3回転ジャンプを跳ぶという選択肢もあったが、どれを跳んだらいいのかわからなくなってしまっていたため、安全を考えて4回転トーループを跳ぶことを決断。コレオシークエンスを短くしてそのあとに単発で入れたが、回転不足を取られて転倒という形になってしまった。

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