羽生結弦は燃えている。チェンと比較して
「ノーミスでも勝てなかった」 (3ページ目)
今シーズン前半戦は、ルール変更で演技時間が30秒短くなった影響からか、チェンや宇野昌磨も含めて、誰もがなかなかノーミスの演技ができなかった。だが、全米選手権でチェンが覚醒し、初めてSP、フリーともにノーミスで完璧な演技を披露し、342.22点という得点を叩き出した。その時、羽生の心の中で、燃えるものが出てきたのかもしれない。
その炎は世界選手権でチェンに圧勝されたことで、さらに大きくなった。それが「これからは複数種類の4回転にも挑戦したい」という彼の言葉に表れている。
ただし、右足首の状態は、これからも彼にとってリスクになるだろう。ケガの状態を羽生はこう話す。
「いろいろ相談していますけど、手術してどうなるという問題でもないです。大きく痛めてしまってからは、より簡単な衝撃でもケガをしてしまうし、以前より大きなケガになってしまうというのをすごく感じています。今季のケガは五輪前とはまったく違う方向からのケガでしたけど、明らかに今回の方が治りは遅かったし、状態が悪かった。やっぱり、足首の耐久性や寿命みたいなものを考慮したうえで、リスクを負いながら練習しなければいけないなということを、今回は突きつけられました」
だからこそ、現時点では来季はどんな4回転に挑戦し、何を入れていきたいかということは「明言できない」と言う。
「もちろん、ルッツに関してはすでに跳べているジャンプですし、筋力もだいぶ戻ってきているし強くもなっているので、たぶん1~2週間練習をすれば何十本かに1回は跳べる確率に戻せると思います。でも僕の場合は試合で失敗するリスクより、ケガをするリスクをかなり大きく考えていかなければいけないかなと思うので、難しさはありますね。ただやる気はあります」
この世界選手権へ向けて、昨年の五輪の時より練習で追い込めたが、それは痛み止めの薬を服用しながら、という状態だった。4月に行なわれる世界国別対抗戦の出場を回避したのは、ケガの治療に専念して、一日も早く4回転ジャンプの練習を開始したいという、正直な気持ちの表れだろう。羽生の心はすでに、来季へ向かっているようだ。
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photo by Noto Sunao(a presto)スポルティーバ
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