羽生結弦は燃えている。チェンと比較して「ノーミスでも勝てなかった」 (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

 羽生自身もそれに近い想定をしていたのだろう。だからこそ、世界選手権のSPでは「ロステレコム杯以上」という結果を意識していた。まず、4回転トーループ+3回転トーループで約1点のプラス。加えて、その後のフライングキャメルスピンとチェンジフットシットスピンでも得点を積み上げた。さらに、演技構成点での0.5点増があれば、112点台中盤までは可能性があっただろう。それでも、計算上は合計322点台には乗るものの、チェンの323.42点にはわずかに届かなかったことになる。

 もしSPで先に滑った羽生が完璧な演技をしていたら、もちろんチェンにプレッシャーをかけられていただろうし、あとから滑る彼の各要素のGOEも、ジャッジの評価も少し低くなっていた可能性もある。「たられば」にはなるが、それと同じ状況をフリーでも実現できれば、羽生が優勝する目もあったと言える。

 ただ、SPでチェンが107.40点を獲得したのに対し、羽生は最初のサルコウがパンクするなど、パーフェクトに滑った場合に想定していた得点より17点以上低い結果に。そこからフリーで挽回するのは、かなり難しくなってしまった。

 羽生は、総合2位に終わったフリー翌日、笑顔でこう話した。

「正直な話、平昌五輪後はちょっとフワフワしていたし、今シーズン始まったばかりの前半はフワフワしていて、何か目的がきっちり定まっていないのかなという気がしていました。何かやらなきゃいけないなと思って、スケートをやっていました。でも今は、このシーズンを通して自分の原点が見えてきたし、やっぱりスポーツって楽しいなと思っています。強い相手を見た時にゾワッとするような感覚、それをもっと味わいつつ、そのうえで勝ちたいなと思えた。そのために4回転アクセルもあるという感じですね」

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