「やってやったぞ!」宇野昌磨、逆境を力に変えて精神的に成長

  • 折山淑美●取材・文 Text by Oriyama Toshimi能登直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

 演技が終わった瞬間に強く振り下ろした右こぶし。宇野昌磨は「強い気持ちでやり切れた。『やってやったぞ!』という思いがあった」と説明する。12月22日の全日本選手権男子ショートプログラム(SP)で宇野が見せたのは、全面に出た強い気持ちだった。

強い気持ちが前面に出た演技を見せた宇野昌磨強い気持ちが前面に出た演技を見せた宇野昌磨 直前の6分間練習で異変が起きた。第4グループ1番滑走だった宇野は、最初にダブルアクセルを跳んだ後、2回のアクセルは足を開いたまま両足で着氷。その後にトリプルアクセルを跳んだが膝が付きそうになる着氷だった。その後はジャンプを跳ばず、完璧なジャンプは一本もないまま練習を終えた。

 演技後「ケガをしたようだが?」という質問に「気づいている人もいるかもしれないですが、詳しいことはフリーが終わるまで僕の口からコメントはしたくありません。それを言い訳にしたくないので、フリーが終わってから6分間練習の思いだったり、いろんなことを話したいと思います」と答えた。

 そんな宇野の演技は、かつての彼にはないほど、気迫が溢れ出した滑りだった。今季不安定だった最初の4回転フリップは、GOE(出来ばえ点)加点3.61点がつく。気持ちの強さが見ている側に突き刺さってくるジャンプだった。続く4回転トーループ+2回転トーループは、「できれば4回転+3回転をやりたかったですが、失敗する確率が高かったので、初めから4回転+2回転にするつもりでした。強い自分がいた中にも、冷静な自分がいたのかなと思います」と振り返るように、きっちりと2.58点の加点をもらった。

1 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る