佐藤信夫氏・久美子氏(元浅田真央コーチ)に
聞く「復帰から現役引退まで」 (4ページ目)
久美子 話も聞いていないようでよく聞いている。賢いんですよ。チャンピオンになっていく人というのは、みんなそれぞれに何か、特別なものを持っていますね。
――結局、真央さんにとっては昨季が現役最後のシーズンになりました。
信夫 シーズンに向かうときは初めての年でも最後の年でも同じで、何ができるのか、何をやればいいのかを考えながら取り組みます。ですから普段通り、取り組んでいました。
久美子 ただ、やはり健康面ですね。そこがすべて整わないと、本当の練習ができない。昨季はその部分でちょっと引っかかってしまったというところがありました。思うように練習ができなかったというのが一番の問題でした。その前のシーズンの反省を踏まえて次のシーズンに突入するための準備をするわけですが、その準備がどんどん遅れていくものですから、だんだん焦ってくる。はかどらない状況が続いて、本人にとってはすごく苦しいし、私たちも苦しくなる。ひざの痛みが増してきたのはフランス杯の後ぐらいかしら。
信夫 そうだね。
久美子 そんな状態では全日本選手権は間に合わないですし、健康面で万全じゃなかったから、私たちもプッシュしたくてもできない。平昌五輪というゴールみたいなものが見えていたじゃないですか。もし練習ができる状況であれば、彼女はものすごく頑張る人だから、頑張ったと思いますし、今の若い子にはない真央ちゃんのいい部分というのがいっぱいあるわけだから、それを生かせば可能性がないわけではなかった。だけど練習できる状況になかったということが、本人も一番つらいことだったと思います。その結果、悩み抜いてああいう結論を出したのでしょう。
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