「勝って当然」を勝った宇野昌磨が、全日本で手にした貴重な経験値 (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi 能登直●撮影 photo by Noto Sunao

 無良は、羽生結弦が欠場したなか「自分たちがトップとして戦い、自分たちが全日本選手権を作り上げていかなければいけない」と考えていた。SPの得点差を考えれば、宇野に逆転される可能性が高いと思いつつ、その戦いをより熾烈なものにしなければいけないという気持ちが強すぎたのだろう。

 そんな状況で、宇野が最終滑走者として登場。普通に滑れば優勝は確実。だが宇野は、自分の調子がいいという確信がありながらも、気持ちをうまくコントロールできなかったSPの失敗を引きずっていたという。

「朝の公式練習まではひどく落ち込んで、引きずっていましたけど、悔しいとか、つらいと思い過ぎて疲れてしまったので、もうどうでもよくなってきて。とりあえず楽しもうという気持ちに至りました。それで、氷の上に立って、笑顔を作ろうと思ったけど、何か笑顔なのか鬼気迫っているのかわからないような顔になってしまった」と笑う。

 その演技から滲み出ていたのは、強い気持ちだった。動きにメリハリがあり、力強さを感じさせる滑り。最初の4回転フリップと4回転トーループは回り過ぎた状態でステップアウトをしたが、動揺する気配を見せずに乗り切ると、ステップはキレのある滑りでGOE加点を稼いだ。

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