【ボクシング】日本人初のウェルター級世界王者を目指す佐々木尽 体重超過での惨敗に「やめるべきだ」と考えた日 (2ページ目)
「自分は、不器用だし、覚えも悪い。エリートでも何でもない。一番下から挑戦する。堕ちる時もあるかもしれない。でも、必ず這い上がる。敗北や失敗を繰り返して、最後は、頂点に立つ。曲を聴いた時、自分自身のボクサー人生を、そう思い描いたんです」
2018年8月24日、17歳1カ月でプロデビューし、2ラウンドKO勝利。以降は、唯一、誇れる無二の強打を武器に、倒し続けた。
デビュー以来7戦7勝6KOで、東日本ライト級新人王の決勝に進出。プロ8戦目となるはずだった同決勝は、体重超過で棄権。それでも、およそ1年ぶりとなる仕切り直しの8戦目は、日本ランカー相手に初回45秒KO勝利。10戦目で、日本スーパーライト級ユース王座に就いた。
当時19歳4カ月――。アマ戦績1勝3敗だった少年は、夢を叶える自分の姿が、ほんの微かに見え始めた。だが、自らその扉を閉ざした。二十歳で迎えた大きなチャンス、WBOアジアパシフィック、そして日本スーパーライト級のタイトルがかかる試合(対平岡アンディ)で、再び体重超過を犯した。
試合はその後、規定に基づき当日計量で成立し、「平岡が勝利した場合のみ、タイトル獲得。佐々木が勝利した場合は王座空位」という変則ルールで行なわれた。
結果は惨敗、11回TKO負け。
2度目の体重超過という事態を重く見たJBC(日本ボクシングコミッション)からは、6カ月のライセンス停止、 制裁金として、ファイトマネーの20% 徴収という処分が下された。八王子中屋ジムのチーフトレーナー兼マネジャーの中屋廣隆にも、厳重注意処分が下された。
「挫折というよりも、恥ずかしい気持ちと、大勢の人たちに迷惑をかけた申し訳なさのほうが強かったですね。『自分は、ボクシングは続けてはダメな人間だ』と思いました。『もうこれで終わり。ボクシングはやめるべきだ』と考えました」
試合後はしばらく自宅に引きこもった。ジムにも顔は出さず、ボクシングとは、あえて距離を置いた。時間だけがすぎ、昼と夜の区別も曖昧になり始めた。
これから何をすればいいのか。
自分は何者なのか。
答えは出なかった。
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