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【ボクシング】井上尚弥のフェザー級転向は、山中慎介から見て「ベストなタイミング」 昇級後に対戦が楽しみな選手は? (2ページ目)

  • 篠﨑貴浩●取材・文 text by Shinozaki Takahiro

――確かに、入場からリングインするまでも静かに感じました。

「僕の現役時代の感覚では、会場の空気感はパフォーマンスに影響します。今回の興行はタイトルが「THE RING V:NIGHT OF THE SAMURAI」ということで、日本人選手が中心でしたが、会場の熱量が高いようには見えませんでした。あの独特な、落ち着いた雰囲気が、井上のファイターとしての本能、野生の感覚を少し削いでしまった可能性はあると思います」

――試合前には、バンテージチェックで問題があったと聞きました。バックステージがスムーズに進行しないなど、試合に集中しにくい環境もあったのかもしれませんね。

「ルールミーティングで確認していた巻き方に対して、当日になって相手側から突然クレームがついたそうです。集中力を高める時間帯にそういったトラブルがあったことも、『気持ちと体が一致しなかった』要因のひとつかもしれません」

【年間4試合の過酷さ】

――井上選手は2025年、「年間4試合」というハイペースで試合を行ないました。それによる疲労はどうでしょうか?

「それは間違いなくあると思いますよ。僕自身、世界戦を年に3回やったことが一度だけあったんですが、それでも『これ以上は無理だ』と思うほど過酷でした。それを年に4回ですからね」

――試合前の準備を含めると、かなりハードスケジュールになりますね。

「体重の管理はもちろんですが、スパーリングの数が半端じゃない。1試合につき、おそらく1カ月半くらいはスパーを重ねているはずです。それを年に4回繰り返すということは、単純計算で半年間スパーをやっていることになります。階級が上の選手ともやっているでしょうし、肉体的、精神的な消耗は相当なはずですよ。その過酷な一年を走り抜いたラスト一戦でしたから、疲れが出ていたのかもしれません」

――年間4試合のスケジュールをこなすには、過酷な練習に耐えられる肉体的な強さや、精神力が必要ということですよね。

「そういうことですね。密度の濃い練習を4回こなせること自体が才能ですし、強さの証明です。あらためて振り返ってみても、そのタフさには驚かされます。今の時代、ビッグネームになると、例えば、昨年12月に引退したテレンス・クロフォード(アメリカ)のように、年に1試合のスーパーファイトに集中するスタイルが主流になりつつあります。そのなかで、一年に4回もリングに上がるというのは、ボクシング界全体で見ても極めて稀な例ですよね」

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