【女子プロレス】長与千種の「赤」を背負う暁千華が振り返る壮絶プロテスト Sareeeとのデビュー戦は「感情が出せなかった」 (4ページ目)
2024年9月29日、新木場1stRINGで公開プロテストが行なわれた。メニューはスクワット300回、三点倒立、ブリッジ1分、ブリッジ返り10回、回転運動、受け身、そしてスパーリング3分×3本。宝山愛、桃野とのスパーリングを終えた暁は、ほぼ満点に近い出来だった。
しかしその瞬間、長与は急きょ、彩羽をリングへ送り込んだ。
「匠さんが出てきた瞬間、『うわあ、クソ!』という感情が込み上げてきて。何に対して"クソ"なのか自分でもわからないんですけど、すごく悔しくて......。『めちゃくちゃやってやる!』ってスイッチが入りました」
スパーリングが始まると、彩羽に潰されていく。予定時間の3分が過ぎても長与は止めず、攻防は6分にも及んだ。最後は立ち上がることも難しい状態だったが、それでもなんとか足を踏み出せたのは、観客の声援が背中を押してくれたからだという。
結果は満点合格。限界の向こう側まで踏み込んだ末の合格だった。
【赤を纏い、Sareeeとのデビュー戦へ】
プロテストの数日後、彼女は"暁千華"というリングネームを授かった。「千の種から、千の華が咲く」という意味が込められている。"千"の字を目にした瞬間、胸の奥にじんわりとうれしさが広がる一方で、その重みにぞくりとするようなプレッシャーも押し寄せてきた。
デビュー戦は10月27日、名古屋国際会議場イベントホール大会に決まった。その2日前、暁の元にコスチュームが届く。長与と同じ、真っ赤な水着だった。里村は「自分が赤をもらうのは当たり前だと思っていた」と語っているが、暁にとって赤はあまりにも大きく、そう簡単に自分の色だとは思えなかった。
そして迎えたデビュー戦。対戦相手は、マリーゴールドとSEAdLINNNG、2団体のチャンピオンだったSareee。赤を纏い、暁は初めての大舞台に立つことになった。
私はその試合を記者席から見ていた。暁が入場した瞬間、隣の専門誌記者と思わず目を合わせた。「これですよ!!!」。プロレスラーの強さは脚に出る。照明に照らされた暁の逞しい太ももに、私たちは抑えきれない高揚を共有した。
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