【ボクシング】山中慎介から見た井上尚弥は「衰えた」どころか「手がつけられない」 KO以外で見せた圧倒的な強さを解説 (4ページ目)
――4ラウンド、アフマダリエフ選手が右ジャブを3回突いて左を出そうとした瞬間、井上選手が右を合わせた場面も印象的でした。
「タイミングを見てコンパクトに合わせていました。井上には、ああいうカウンターも打てるから中に入れないんですよ。アフマダリエフも、入ろうとした瞬間カウンターをもらってしまうんです」
――日本時間で同じ日(現地9月13日)に行なわれたテレンス・クロフォード(アメリカ)対サウル・"カネロ"・アルバレス(メキシコ)戦も、スピードと技術でクロフォード選手が完封しました。井上選手は試合を見て「参考になった」と語っていましたが、重なる部分も多かったですか?
「そうですね。前に出るカネロが(クロフォードに)触れることができませんでしたよね。どちらの試合も判定決着でしたが、十分に楽しめるボクシングでした。ああいう魅せ方ができるのは本当に限られた人間だけだと思います」
――井上選手もクロフォード選手も、PFPランキングのトップ3に長らく名を連ねています。
「共通点は、ボクシングに必要な要素のすべてを非常に高いレベルで持っていること。そのうえで駆け引きのうまさがあり、複数のプランを準備して試合に臨んでいると思います。今回の井上のアウトボクシングも、その豊富な引き出しのひとつ。クロフォードはスイッチしますが、井上もサウスポーで戦えますからね(笑)」
――過去に世界戦(2017年のWBO世界スーパーフライ級タイトルマッチ、リカルド・ロドリゲス戦)でスイッチしたことがありましたよね。
「ありましたね。できることの幅が広く、突出していますよ」
(後編:井上尚弥や中谷潤人を筆頭に「スーパーバンタム級でも日本人同士でベルトを争う時代がそこまできている」>>)
【プロフィール】
■山中慎介(やまなか・しんすけ)
1982年、滋賀県生まれ。元WBC世界バンタム級チャンピオンの辰吉丈一郎氏が巻いていたベルトに憧れ、南京都高校(現・京都廣学館高校)でボクシングを始める。専修大学卒業後、2006年プロデビュー。2010年第65代日本バンタム級、2011年第29代WBC世界バンタム級の王座を獲得。「神の左」と称されるフィニッシュブローの左ストレートを武器に、日本歴代2位の12度の防衛を果たし、2018年に引退。現在、ボクシング解説者、アスリートタレントとして各種メディアで活躍。プロ戦績:31戦27勝(19KO)2敗2分。
著者プロフィール
篠﨑貴浩 (しのざき・たかひろ)
フリーライター。栃木県出身。大学卒業後、放送作家としてテレビ・ラジオの制作に携わる。『山本"KID"徳郁 HEART HIT RADIO』(ニッポン放送)『FIGHTING RADIO RIZIN!!』(NACK5)ウェブでは格闘技を中心に執筆中。レフェリーライセンス取得。ボクシング世界王者のYouTube制作も。
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