【ボクシング】山中慎介から見た井上尚弥は「衰えた」どころか「手がつけられない」 KO以外で見せた圧倒的な強さを解説 (3ページ目)
――アフマダリエフ選手は、カルデナス戦のように井上選手が打ちにきたところでカウンターを狙っていたのでしょうか。
「ひとつの作戦として、距離が近くなったところでの左フックは狙っていたでしょう。ただ、井上のステップインとバックステップの速さ、瞬間的な反応のよさで、それを許さなかった。結果として、合わせることができなかったんでしょう」
――今回の試合も井上選手のジャブがよく当たっていました。
「サウスポーに対して、あれだけうまくジャブを打てる選手はなかなかいません。基本的には内側から突いていきますが、強くて硬くてキレがある。位置取り、踏み込み、距離の取り方もさまざまですね。それに加えてパワーがありますからね。あのジャブを打たれると、相手はなかなかペースを握れないですよね」
――ちなみに、山中さんが現役時代、ジャブが厄介だったオーソドックスの相手はいましたか?
「それが、いなかったんですよ。ジャブの差し合いや前手の使い方では自分のほうが上回っていたと思います。だからこそ、井上のように自分より身長が低い選手に前手で優位に立たれる感覚は、想像すると本当に厄介だなと感じますね」
――試合後の両者の顔を見るとダメージ差は歴然としていましたね。
「アフマダリエフの顔は傷だらけでしたね。終盤の表情を見てもかなりしんどそうでした。闘争心が削られた感じではないでしょうか」
――井上選手は、試合後の会見で「衰えただの、ピークをすぎただの言われ放題なんで......」と語っていました。そうした声を試合内容でねじ伏せた印象です。
「内容で完全に証明しましたよね。むしろ、スタイルの幅をあらためて示した試合だったと思います。本人も『新しいスタイルではなく、いつでもできるスタイル。今回は久しぶりに出しただけ』と話していましたが、そのとおりで、もともとやろうと思えばできるんですよね」
【試合を決定づけた左ボディ】
――慎重な立ち上がりから少しずつペースをつかんでいった井上選手ですが、試合の流れが大きく変わったのはどのあたりだったでしょうか?
「6ラウンドの左ボディですね。井上選手は、ロープ際から右フック、左ボディ、右アッパー、左ボディ、右アッパー、左ボディを叩き込んで前に出ました。あれはかなり効いていたと思います。そこからアフマダリエフはペースが一気に落ちて、前に出られなくなった。逆に井上は、続く7ラウンドで完全にリズムに乗っていましたね」
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