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【ボクシング】山中慎介から見た井上尚弥は「衰えた」どころか「手がつけられない」 KO以外で見せた圧倒的な強さを解説 (2ページ目)

  • 篠﨑貴浩●取材・文 text by Shinozaki Takahiro

【KOではない形で示した強さ】

――前回のラモン・カルデナス(アメリカ)戦ではダウンもありました。今回の戦いぶりはいかがでしたか?

「カルデナス戦は、久々のラスベガスという舞台で『魅せたい』という気持ちが強かったように見えました。少し強引に攻めた部分もあったと思います。でも、今回は本当に冷静で、試合の立ち上がりも慎重に入っていました。焦らず、タイミングや距離感を重視していましたし、KO勝利とはまた違う大きな収穫になった試合だったと思います」

――入場時の表情や雰囲気については?

「カルデナス戦では少し表情に硬さがあったように感じましたが、今回は非常に落ちついていて、余裕がある印象でしたね」

――いつもとは違った戦い方で、見る者を魅了しました。

「KOではない形でも、圧倒的な強さを示せたのが大きいと思います。スーパーバンタム級に転向後、2度のダウンがありましたが、強敵のアフマダリエフを相手に圧倒的な勝ち方を示した。『いったい誰が勝てるんだ......』というインパクトを与えましたよね」

――試合中にはノーガードで魅せる場面もありました。

「ボクシングは単なる殴り合いではなくて、スピード、パワー、テクニック、スタミナ、メンタルなど、あらゆる要素が問われる競技です。そのすべてにおいて、井上は突出しています。相手からすれば、本当にどうすることもできない存在ですよ」

――アフマダリエフ選手も、アマチュア時代にオリンピックで銅メダルを獲得した実力者ですが、そう思わせないほどの戦いぶりでした。

「アマチュアエリートで実力者なのに、井上を相手にするとそう見えなくなってしまいます。それほど、(井上が)技術で完全に上回っていました」

――序盤、冷静に入った井上選手に対して、アフマダリエフ選手もかなり慎重に見えました。

「そうですね。序盤はお互いに様子を見ながら、という展開でした。ただ、井上はリズムをつかんでいきましたが、アフマダリエフはなかなか手を出せなかった。攻めないとどうしようもないのはわかっていたはずですが、結局最後まで打開策が見つからなかったですね。ダメージも蓄積していました」

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