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「中谷潤人には改善の余地がある」元世界ヘビー級王者・ウィザスプーンが語る井上尚弥戦の「勝利のカギ」とは? (4ページ目)

  • 林壮一●取材・文 text by Soichi Hayashi Sr.

「ジュントにいつか会ってみたいね。ところで、彼が俺のように扱われることはあり得ないよな? 毎回、本人が納得した条件で試合にサインしているんだろう?」

 今度は、こちらが質問された。

「俺のように」とは、プロモーターから搾取され続けた過去を指す。ドン・キングと契約していたウィザスプーンは、ファイトマネーのピンハネに泣かされた。多い時は、90パーセントをしぼり取られている。

 闘うことへのモチベーションを失った彼は、WBC王座を初防衛戦で、WBAのベルトは2人目のチャレンジャーに奪われた。後にキングと法廷で争い、それでも食うため、子供を養うにはほかに稼ぐ方法がない、と45歳までリングに上がった。

 中谷はWBOフライ級チャンピオン時代から統一戦を希望していたが、なかなかマッチメイクに恵まれなかった。今回、ようやく大舞台が用意された。そして、今や井上尚弥が名指しで対戦を呼び掛ける存在となった、そう私は答えた。

「なるほど。イノウエ戦、楽しみだな。ジュントが今回の試合で学習したことを、どう生かすかに期待したいね」

 フィラデルフィアの北、ベンサレムで、2010年生まれの五女と生活する元ヘビー級チャンプは、微笑みながら言った。

 3階級王者、4本目の世界タイトルを手にした中谷潤人は、メガ・マッチに向け、ギアを上げそうだ。

著者プロフィール

  • 林壮一

    林壮一 (はやし・そういち)

    1969年生まれ。ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するもケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。ネバダ州立大学リノ校、東京大学大学院情報学環教育部にてジャーナリズムを学ぶ。アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(以上、光文社電子書籍)、『神様のリング』『進め! サムライブルー 世の中への扉』『ほめて伸ばすコーチング』(以上、講談社)などがある。

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