「中谷潤人には改善の余地がある」元世界ヘビー級王者・ウィザスプーンが語る井上尚弥戦の「勝利のカギ」とは? (2ページ目)
【井上戦の「勝利のカギ」は?】
元世界ヘビー級チャンプは、中谷と西田の身長とリーチを確認した上でこう話した。
「昨夜のジュントはパワフルだった。接近戦を選択したが、クロスレンジで戦うのであればスリッピングを使うべきだ。そう、フィラデルフィアを有名にしたジョー・フレージャーの代名詞さ。モハメド・アリがプロで初めて土をつけられた試合でも、フレージャーのスリップは有効だった。
ヘビー級として背が低かった(181cm)フレージャーは、相手の懐に入らなければファイトにならなかった。自慢の左フックをヒットできないからな。スリップしながら中に入るのが彼の第一歩だった。あれを習得したからこそ、フレージャーは伝説の世界ヘビー級チャンプになれたんだ。俺もマネをして練習を積んだもんだよ。本当に何度も何度もやって、体に染み込ませた。
ただ、ジュントの場合は体型を生かし、距離を取った戦いをしてもよかったと俺は思う。あくまでも私見だけど......。離れた距離で、外からのジャブ、ジャブ、そしてワンツー。さらにジャブ、左フック、右って調子で、フットワークをベースにした戦いさ。打ち合いよりもスタミナを失わないし、ジュントを生かせるように感じる。距離を取った戦いを極めてもいいんじゃないか」
リモート取材の画面越しに、ウィザスプーンはパンチを振るってみせ、やがて身を乗り出した。
「相手のバランスを崩してコンビネーションを繰り出すといういつものスタイルでも、ジュントはニシダを崩せただろう。あれだけのリーチがあるんだぜ。ジャブを完璧に打ち、ワンツー、右フック、そして左ストレートって調子でパンチを出し、ディフェンスをしっかり固める。そのほうが合っているように思える。
とにかく、ボクシングはディフェンスが大事だ。イノウエはニシダより速いし、間違いなくパンチもある。ほんのわずかなバランスの崩れや、ノーガードになった瞬間を突いてくるのは目に見えている。だからこそ、勝利のカギとなるのがディフェンスなんだよ。イノウエはジュントより背が低いが、階級を上げれば、今後、ジュントの相手は大きく、パンチも重くなる。絶対に食らっちゃいけない」
大橋ジムの大橋秀行会長(左)と試合を見守った井上尚弥(中央)。来年5月に中谷との対戦が予定されている photo by Hiroaki Yamaguchiこの記事に関連する写真を見る
確かに、中谷自身も「3ラウンド、4ラウンドに少し西田選手のパンチをもらってしまったので、そこは反省しています」と統一戦を振り返っている。
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