佐竹雅昭がサム・グレコ戦で自覚した「脳へのダメージ」の蓄積 その後のキモ戦は「キャリアのピーク」 (3ページ目)
その裏には、1993年に大手ゲーム会社「セガ」が発売した対戦型格闘ゲーム、『バーチャファイター』の世界を表現する狙いもあったという。
「バーチャファイターの登場人物のひとり、結城晶は自分をイメージして作ってくださったキャラクターなんです。あのツンツンの髪の毛もそう。そんな世界を、異種の格闘技から来たキモと道着を着て闘うことで、現実にしようと考えたんです」
【また記憶が飛ぶも「しっかり闘っていた」】
舞台は、ニールセンを倒した日本武道館。武道の殿堂での決戦は大荒れとなった。
初めてのキックボクシングに挑戦するキモは、ゴングと同時に身長191cm、 110kg超の体格を生かして猛烈に突進する。左右のパンチを振り回し、佐竹は何度もロープ際に押し込まれた。
その後、マットに倒されて後頭部と背中を叩きつけられる場面も。そこからキモはマウントを取り、佐竹の顔面を軽く殴った。レフェリーが注意を与えたが、まさに異種格闘技という展開に武道館は興奮の坩堝(るつぼ)と化した。
なおも突進するキモに対し、佐竹は左ミドル、右のローキックで活路を見出す。そしてヒザ蹴りの連発から右ストレートでダウンを奪った。そこでは仕留めきれなかったが、2ラウンドで強烈な右ストレートを突き刺し、キモが崩れ落ちるところに右ローキックを入れて再びダウンを奪う。
立ち上がったキモだったが、佐竹の左ミドルが入って3度目のダウン。レフェリーが10カウントを入れたものの、なぜか試合は続行。グロッキーのキモに、最後はまた左ミドルを入れてとどめを刺した。
その一戦について、佐竹は「あの試合は面白かった」と笑顔で語った。
「完全な異種格闘技戦でしたし、絶対に負けるわけにはいかない。そのヒリヒリ感が面白かったです」
劇的なKO勝利だったこの試合も、グレコ戦と同じように記憶が飛んでいた。
「どこで記憶が飛んだのかはわからなかったんですが、ビデオを見直すと、最初にロープへガーンと押され、頭を打った時でしたね。ニールセンとの試合では、倒す瞬間に時間が止まった感覚でしたが、記憶が飛んでもしっかり闘っていたんですね。空手家の本能だと思います」
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