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井上尚弥の圧勝劇を元世界チャンピオン・田口良一が分析 パンチをもらう場面もあったが「完全無欠なんて酷」 (2ページ目)

  • 林壮一●取材・文 text by Soichi Hayashi Sr.

【井上は「ちょっとパンチをもらっただけで騒がれる」】

 2ラウンドに入ると、統一スーパーバンタム級王者はギアを上げる。細かくステップを踏み、スピードを生かした。上、下と、右ストレートが何度もキムを捉える。

「キム選手はクリーンヒットされた後、首を振って『ダメージはない』みたいなアピールをしていましたが、相当なプレッシャーを感じていたでしょう。彼のレベルが低いということではなく、井上くんがすべてを上回っていました」

 3ラウンド、顔面を中心にパンチを繰り出していた井上だったが、残り30秒で左ボディアッパーをヒットし、挑戦者の動きを鈍らせる。

「試合が始まった時から、井上くんが防衛するとは感じていましたが、一気に流れを引き寄せた3ラウンドでKO勝ちを確信しました。『これは時間の問題だな』と。

 とはいえ、キム選手が井上くんに左ストレートを当て、ヒヤっとする場面もありましたね。井上くんの場合は、ファンが完璧を求め過ぎるんです。だから、ちょっとパンチをもらっただけで騒がれる。ほんの数発でも、彼の場合は『けっこう打たれたな』と捉えられてしまう。ボクサーですから、多少相手のパンチをもらうのは当たり前なので......。ちょっと可哀想になります。

 空振りにしてもそうですよ。百発百中なんてあり得ないけれど、井上くんだからパーフェクトが期待される。全部が全部、完全無欠なんて酷です。"捨てパンチ"だって使う訳ですし」

 そして迎えた第4ラウンド、序盤の井上は再三、右ストレートを出した。そして残り1分を過ぎた頃、左フックをヒット。即座に左ボディアッパーを放ち、キムが体を折ったあとで右ストレート、左ボディアッパー、右ストレート、左ボディアッパー、右ストレート、左フック、そして右ストレートを顔面にぶち込む。するとキムは、ロープにもたれるようにバランスを崩し、次の瞬間、両膝をついた。

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