杉山しずかが総合格闘技16年目で掴んだ初のベルト 「やめたら楽になるのに」と思いながら戦い続けたワケ (2ページ目)

  • 篠﨑貴浩●取材・文 text by Shinozaki Takahiro

【16年目で芽生えたベルトへの執着】

――総合格闘技のキャリア16年目で初めてのベルト。その重みはいかがですか?

「正直、DEEPやDEEP JEWELSのベルトに関しては、強い執着がなかったんです。獲れると思っていなかったことが、実際に獲れていなかった理由だと思います。『自分はチャンピオンのキャラクターじゃない』と思っていたんですよね」

――RIZINにも出場し、女子格闘技のトップ戦線で活躍してきても、ベルトには執着がなかったんですか?

「自分のことをあまり理解してなかったのかもしれません。本来は上を目指して、チャンピオンを狙って格闘技をやるべきだと思いますが、私はひとつひとつ、目の前の試合を勝っていくことを重視していたので」

 でも、今年のタイトルマッチが決まった時には『このタイトルを獲るべきなんだ』と自分に言い聞かせました。そうやって意識を変えたのがよかったんだと思います」

――なぜ、ベルトへの意識が変わったんですか?

「試合間隔が空いたことで、試合をする意味や、目指すものについてあらためて考えたんです。あと、パンクラスはランキング制なのがDEEPとは違うところで、自然と上を目指す意識が生まれました。明確な位置づけをされることが、スイッチを入れるきっかけになったと思います」

――ランキング制が、目標設定とモチベーションに繋がったということですね。

「そうですね、それまでは、ランキングがないことが自分に合っていた部分もあって、それはそれでよかったんです。でも、パンクラスで自分がランキングに入ったことで、『これは全員で頂点を取りにいくゲームなんだ』と意識が変わりました」

――タイトルマッチでは試合開始直後、杉山選手はサウスポーで構え、奥足でローキックを出していきました。その後、重田選手にテイクダウンされて下になりましたが、焦りはなかったですか?

「下になったのはプランどおりではありませんが、焦りはなかったです。『そんなに怖くないな』と一瞬でわかったので」

――怖くないというのは?

「パワーもそうですし、ちょっと焦っている感じがしたんです」

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