『極悪女王』ダンプ松本はリング外もヒールを徹底 元東スポの柴田惣一がリングネームの秘話を語った (3ページ目)

  • 大楽聡詞●取材・文 text by Dairaku Satoshi

【全女のレスラーたちの個性あるリングネームの数々】

――ダンプさんのリングネームは、なぜ「ダンプ松本」になったんでしょうか?

柴田:本名の「松本香」で活動していた時、観客から「ダンプみてぇだ!」と指摘されたことが由来です。そこから、極悪同盟のリングネームは重機シリーズになった。「ブル中野」はブルドーザー、「クレーン・ユウ」はクレーンといったように。ただ、早々にネタが尽きたのか、そこでストップしましたね。トラクターなどでは、農村の田園風景が浮かんで、ほのぼのしてしまいますし(笑)。

――次は「コンドル斉藤」さんでしたね。

柴田:そうですね。リングネームは、全女を設立した松永4兄弟が決めていたみたいです。 「ジャッキー佐藤」は、一説では事務所の隣に車の修理工場があって、そこに置いてあった「ジャッキ」が由来になったとも言われてますね。あと、「トミー青山」は、本名は冨高千賀子というんですけど、松永兄弟がよく青山で飲んでいたから、苗字の冨(トミ)と青山でトミー青山。もし松永兄弟が赤坂で飲んでいたら、トミー赤坂だったかもしれません(笑)。

――そんな理由で決めていたこともあるんですね(笑)。

柴田:「ルーシー加山」は、本名が漆原幸恵だから漆原が「ウルシー」になって、ウを取ってルーシーになったんですけど、これは苦しいですよね(笑)。そして、レフェリーも務めたジミー加山(松永国松)さんの知り合いからの紹介で全女に入門したから、「ルーシー加山」になった。あとは出身地から「阿蘇しのぶ」とか、ストレートなものもありましたね。

 山崎五紀と立野記代は本名だけどタッグチーム名が「JBエンジェルス」。一方でデビル雅美や、ビクトリア富士美の実姉で覆面レスラーのシルバーサタンなど、悪魔系もいましたね。下田美馬と三田英津子は「ラス・カチョーラス・オリエンタレス」という覚えにくいチーム名だったけど「ラスカチョ」と呼ばれて人気があった。結成当初は北斗晶との3人ユニットで、スペイン語で「東洋の獰猛な子ども」という意味でした。

――リングネームやユニット名を聞くだけで、当時の記憶が蘇ってきますね。

柴田:最初は抵抗があった、というレスラーもいたそうですけど、「名は体を表す」というか、不思議なことにだんだんとリングネームに合わせたファイトになっていくんですよね。
女子に限らず、「どのリングネームが好きか」という話題だけでもプロレスファンはいくれでも熱く語れる。プロレスは本当に奥が深いですね。

(第7回:WWE殿堂入りの「極悪同盟」ブル中野の波乱の人生「いまだ熱心なファンも多い」>>)

【プロフィール】

柴田惣一(しばた・そういち)

1958年、愛知県岡崎市出身。学習院大学法学部卒業後、1982年に東京スポーツ新聞社に入社。以降プロレス取材に携わり、第二運動部長、東スポWEB編集長などを歴任。2015年に退社後は、ウェブサイト『プロレスTIME』『プロレスTODAY』の編集長に就任。現在はプロレス解説者として『夕刊フジ』などで連載中。テレビ朝日『ワールドプロレスリング』で四半世紀を超えて解説を務める。ネクタイ評論家としても知られる。カツラ疑惑があり、自ら「大人のファンタジー」として話題を振りまいている。

【写真】ケンコバのプロレス連載 写真で蘇る激闘の記憶!

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