井上尚弥戦の期待高まる中谷潤人 師とのLAキャンプで「次戦は拓真選手以上の内容で勝ちたい」

  • 林壮一●取材・文・撮影 text & photo by Soichi Hayashi Sr.

【アメリカでも井上尚弥の対戦候補に名が挙がる】

 アメリカの法曹界をリードする超名門、ハーバード大学院出身の弁護士、ボブ・アラムがボクシングビジネスに興味を持ったのは1960年代のことだ。敏腕弁護士らしく周到に準備し、1973年にトップランク社を立ち上げた。

 以来、プロモーターのライバルであるドン・キングと鎬を削りながら、第一人者として、主に中量級のビッグマッチで手腕を発揮してきた。モハメド・アリの試合をマッチメイクしたこともあったが、希代のカリスマが去ったリングを支えた4名のスター王者―――統一ミドル級タイトルを12度防衛した"マーベラス"・マービン・ハグラー、ウエルターからライトヘビーまで5階級を制したシュガー・レイ・レナード、同じく5階級制覇を成し遂げたトーマス・"ヒットマン"・ハーンズ、パナマの石の拳、ロベルト・デュラン―――をリーグ戦のようにぶつけることで、アラムはボクシング界を活性化させた。

10月14日の次戦に向け、LAでキャンプ中の中谷潤人10月14日の次戦に向け、LAでキャンプ中の中谷潤人この記事に関連する写真を見る

 プロモーターとしての地位を揺るぎないものとしたアラムは、1992年のバルセロナ五輪で金メダルを獲得したオスカー・デラホーヤ、1996年のアトランタ五輪で銅メダリストとなったフロイド・メイウェザー・ジュニア、フィリピンから本場に乗り込んで来たマニー・パッキャオらと契約し、歴史に残るビッグマッチを組み続ける。

 現4団体スーパーバンタム級チャンピオン、井上尚弥の一連のファイトもアラムが手掛けている。"モンスター"井上は卓越した力を持つチャンピオンだが、アラムの存在なくして、短期間で2階級にわたる4冠統一には至らなかった。

 2024年7月下旬、そのトップランク社とWBCバンタム級チャンピオンの中谷潤人が契約を締結した。このところ圧巻の勝利を重ね、昨年5月のWBOスーパーフライ級王座決定戦が昨年度の『リングマガジン』の「KO Of The Year」に選ばれるなど、中谷の存在は本場でも注目を集めている。アラムの眼鏡にも適ったのだ。

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