WWEに門前払い→トリプルHも絶賛でオファー増加 里村明衣子が振り返る海外挑戦と、日本女子プロレスの現状 (3ページ目)

  • 尾崎ムギ子●文 text by Ozaki Mugiko

 2018年8月、WWEの女子トーナメント「メイ・ヤング・クラシック」に参戦。WWE最高執行役員のトリプルHに称賛された。9月、イギリスの団体・プログレスで女子王者となり、10月にはドイツの団体・WXWの女子トーナメントで優勝。2019年5月より、WWE・NXTの臨時コーチを務めるようになる。

 そして2021年1月、ついにWWEとコーチ兼選手契約を結び、6月10日、絶対王者であるケイ・リー・レイを下してNXT UK女子王座を獲得。拠点をイギリスに移した。

【日本の女子プロレスは「今は世界一ではない」】

 2022年8月、NXT UKがアメリカのNXTと統合し、現在はNXTヨーロッパ設立に向けて準備が進められている。そうした変化に伴い、里村はイギリスにコーチをしに行ったり、自身の団体経営のために仙台と海外を行ったり来たりしている。

 日本に帰ってきて、仙女の急成長に驚かされているという。

「本当に面白くなりました。誰の力と言うよりは、みんなの力だと思います。NXT UKで私がタイトルを取った時、『ここは仙女の転換期だな』と思ったんです。イギリスに行ったばかりの時はまだ不安定でしたけど、今はもう私が現場にいなくても成り立つようになった。"里村ありきの仙女"というイメージが完全になくなった。みんな本当にいい選手になったなと思います。今の仙女が一番面白い」

 里村の下には、海外の選手から「日本で試合をしたい」という売り込みが毎日のように届く。海外の選手たちにとって、日本で試合経験を積むことはステータス。里村は世界中の選手を育ててみたいと考えている。元NXT UKのミリー・マッケンジーは18歳の時から仙女に参戦し、2023年7月、センダイガールズワールドシングル王座戴冠を果たした。

「海外の選手は体が大きくて華があるし、プロレスに対する考え方も全然違う。自分をプロデュースすることが日課になっているんですよね。日本人同士の試合も面白いですけど、まったく別の文化で育った選手を入れて対戦した時の緊張感が私はすごく好きです」

 15年くらい前まで、「日本の女子プロレスが世界一」と言われていた。WWEのプロレスラー向けに行なわれる映像クラスで、里村もブル中野の映像を観たことがあるくらい、昔の日本の女子プロレスはお手本とされている。しかし、「今は日本が世界一ではない」と里村は言う。WWEの選手育成の体制はあまりにもすばらしい。日本ではスポーツ経験がない選手をイチから育てなければいけないが、WWEでは最初から各界のトップアスリートたちが集まってくる。

「(仙女の)丸森レアとかYUNAも光るものを持っていますし、(DASH・)チサコも最初は何もできなかったですけど一流選手になりました。そこは誇りに思っていますが、時間がかかりすぎる。もっと自分自身が会社の実績を作って、時間を短縮して、最初からいいアスリートを獲得できるようにしたいです」

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