122連勝・藤波朱理が負ける日は来るのか? 吉田沙保里や伊調馨に学ぶ「もっと強くなるには、早く負けること」 (2ページ目)

  • 宮崎俊哉●取材・文 text by Miyazaki Toshiya
  • photo by AFLO

【藤波が負ける状況を検証】

 それでも、そんな藤波といえども、勝負の世界──。いつかは、誰かに黒星を喫することがあるだろう。

 ならば、それはいつ、どんな選手に、どのような状況で......なのか。検証してみた。

 まずは、体調面。レスリングには減量がつきものであり、藤波の場合、53キロ級としては身長も高い(164cm)ので、大会前にはかなりの減量が予想されるが......。

 藤波の体調管理への意識は非常に高く、そのうえ三重県からともに上京し、日体大で現在コーチを務める父・俊一氏が料理づくりはもちろん、生活全般を細かくチェックしている。そのため、今後も減量の問題は大きくないだろう。

 では、どんな相手が立ちはだかるのか。

 日体大で田南部力(たなべ・ちから)女子監督、藤波俊一コーチとともに藤波朱理を指導する伊調馨(ALSOK)は、ロンドンオリンピックで3連覇を遂げたあと、次のようなことを何度か語っていた。

「もし、自分が負けるとしたら、メチャクチャ運動能力が高い、たとえばアフリカ出身の選手とか......かも。レスリングはまだまだ荒削りで技術的にも大したことないけど、無名でノーマークだからデータもなく、何をしてくるかわからない。そうなったら、勝てないかもしれませんね」

 そんな選手がどのような戦い方をしたら、藤波に勝つことができるのか。関係者に取材するとおもしろい答えが返ってきた。

 伊調が所属するALSOKの大橋正教監督は、「藤波に勝つとしたら、とにかくディフェンス力の高い選手」と言う。

「藤波の片足タックルを防ぐのは容易ではありません。でも、たとえ自分の足にさわられようと、抜群の瞬発力でバックステップして、足を取らせない選手とか。

 たとえば、伊調馨のような選手や、須﨑優衣選手(キッツ)もおもしろいかも。スパーリングでそんなシーンをよく見ますからね。でも今、53キロ級には世界中を見回してみても、そんな選手はいないな。試合中にそれを何度もされれば、藤波も焦ってくるでしょうけど」

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